ゼロ知識証明は、相手に追加情報を与えることなく、主張の真実性だけを証明する暗号プロトコルの一つだ。例えば、パスワードを開示せずに正しいパスワードを持っていることを証明することができる。
また、個人情報を相手に提示することなく、年齢確認など特定の主張の真実性を証明することが可能となるため、プライバシー保護の観点からも注目されている技術だ。
近年では、暗号通貨において取引内容を秘匿したまま取引が正しく実行されたことを証明するためにも利用されている。
このゼロ知識証明の中に、非常に安全性の高く、特定の主張だけでなく汎用的にさまざまな主張の真実性を証明する「リセット可能統計的ゼロ知識アーギュメント」があり、これは「証拠暗号」と呼ばれる暗号技術を用いることで実現できることが知られている。
しかし、証拠暗号を使わずにリセット可能統計的ゼロ知識アーギュメントが実現できるかは未解決問題であり、その他の手法でもリセット可能統計的ゼロ知識アーギュメントが実現できるかは不明であった。そのため、なかなか研究が進まないという課題があった。
こうした中、日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、高い安全性を持つゼロ知識証明であるリセット可能統計的ゼロ知識アーギュメントの実現には、実質的に「証拠暗号」の利用が不可欠であることを証明した。
今回NTTは、証拠暗号を使わずにリセット可能統計的ゼロ知識アーギュメントを実現することは不可能ということを証明し、上記の未解決問題を解決した。
リセット可能統計的ゼロ知識アーギュメントを用いると証拠暗号を構築できることを示し、それにより、リセット可能統計的ゼロ知識アーギュメントを実現することは証拠暗号を実現することと等価であることを示した。
この成果は、暗号理論における国際会議である「the 44th Annual International Cryptology Conference (CRYPTO 2024)」において発表され、今後、証拠暗号を用いてリセット可能統計的ゼロ知識アーギュメントを実現する研究が推進されることが期待されている。
証拠暗号を用いたリセット可能統計的ゼロ知識アーギュメントが実現されれば、複数の証明を同時に作ったり、証明者の計算能力が限られている場合でもデータの秘匿性を保証することができる可能性が示唆されている。
今後もNTTはこの研究を進め、データが生成されてから消滅するまでのライフサイクルを通じて、データ所有者のポリシーの範囲内でのみ利用されることを技術的に保証し、安全なデータ流通を可能とする平文のない世界を創ることを目指す取り組み「IOWN PETs」の一技術として活用することを目指すとしている。
また、将来的にはNTTが研究するLLM tsuzumiのセキュアな学習へ適用する計画だ。
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