近年、国内の小売業では消費者ニーズが多様化する一方、生産年齢人口の減少に伴う人手不足などを背景に、デジタル技術を活用して需要変化に即応する高効率な店舗運営に対するニーズが高まっている。また、食べることが可能な食品が大量に廃棄される「食品ロス」が社会的な課題となっており、10月には「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行され、小売業はその対応を求められている。
合同会社西友ではこれまで、各店舗の担当者が商品ごとに過去の在庫・発注・販売・廃棄量や天候・イベント情報などの複雑な条件を考慮して需要を予測した上で、発注量を決定し発注作業を行ってきたが、こうした作業は熟練者による経験・ノウハウと一定程度の作業時間を要していた。
このような状況の中、西友と株式会社日立製作所(以下、日立)は、2018年から両社の知見・ノウハウを融合して、AIを活用した発注業務の効率化に向けた協創を開始しており、本年3月から1カ月間、西友の3店舗の弁当・惣菜売場の19品目を対象に、日立のAIによる需要予測に基づき自動発注を行うシステム「Hitachi Digital Solution for Retail/AI需要予測型自動発注サービス」を適用して共同実証実験を実施した。
そして今回、同システムを全国の店舗へ導入開始した。対象は、西友が販売する弁当・惣菜売場の商品のうち、西友の自社工場で製造した商品をはじめとする約250アイテムである。
同システムでは、AIにより店舗・商品ごとに需要予測を行い、それらを基に発注量を決定するとともに、発注作業の自動化を可能にする。西友では、同システムを導入し担当者が従来行っていた発注業務をAIに任せることにより、店内厨房での加工業務や接客などの店舗オペレーションに一層注力することができるようになるとともに、欠品や食品廃棄ロスの削減を目指す。
同システムの流れは以下の通り。
- 西友が、店舗の弁当・惣菜売場における過去および発注日の各種データ(商品ごとの在庫・発注・販売・廃棄量、気象、曜日・季節変動、販促イベントなど)を日立に提供する。
- 日立が、西友からのデータを同システムのAI技術を用いて分析することで、店舗別・アイテム別の推奨発注量を自動で算出し、西友に提供する。
- 日立が、実績値と予測値を比較して自動補正を行うことで、需要予測精度の向上を図る。
なお、今後日立は同システムをLumadaの小売・流通業向けのソリューションの一つとして展開する予定だという。
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