建物の空調を自動で制御する場合、通常、建物内に取り付けたセンサから得られる計測データと、室内環境の快適性の指標として設定した目標値を一致させる方法が多く採用されている。
しかし大空間の場合、空間利用の障害とならないように、壁面やダクト内にセンサを設置するケースが多いことから、実際に人が滞留する空間等に向けてきめ細かな制御を行うことが難しいという課題があった。
そうした中、竹中工務店は、バーチャルセンサを用いたデジタルツインによる空調制御システムを開発し、「名古屋市国際展示場新第1展示館」に初適用されたことを発表した。
バーチャルセンサとは、「空調機の給気温度」「給気風量」「還気風量」「シーリングファンの循環風量」「サーモカメラから得られた人体・ブースなどの発熱体の表面温度から得られた実空間のリアルタイム計測データ」といった5つの要素を基に、シミュレーションにより温度、風速などを推定する仮想の空間センサだ。
通常の方式では、「空調機の給気温度」の実測値や、壁面センサなどで制御を行うが、今回のシステムでは、シミュレーションのために作成した、メッシュの数だけ空間センサを生成することが可能なことから、きめ細かな空間制御を行うことができる。
なお、今回は約73万メッシュ(約2.0m×1.5m×0.35mグリッド)のバーチャルセンサで制御されている。
今回開発されたシステムは、バーチャルセンサを活用し、デジタルツイン上の仮想空間で行われたシミュレーションにより、実際の空調制御を行うシステムだ。
バーチャルセンサによってリアルタイムにシミュレーションを実行することで得られた、空間の温度・風速の推定値は、中央監視装置に送られる。
中央監視装置では、快適性の指標であるPMVとの比較が計算され、この数字をもとに実際の空調機器の制御が行われる。シミュレーションは4~5分に1回の割合で行われ、瞬時に自動制御に活かされる。(シミュレーション協力:アドバンスドナレッジ研究所)
多数のセンサを用いることにより、きめ細かな制御が可能になるとともに、通常の方式と比較して約30~70%程度の空調消費エネルギーの削減が可能だ。
今後は大空間だけでなく、様々なプロジェクトにおいて提供していく予定だという。
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