東京都市大学都市生活学部 都市生活学科の高柳 英明教授と清水建設株式会社は、共同研究の一環で、スポーツスタジアムやアリーナなどの混雑環境における入退場時の観客人流の実態調査とその混雑評価を実施するとともに、人体装着型のバイタルセンサのデータ解析を行い、局所的な混雑の様態と体感的な快・不快の関連性を見出したと発表した。
これまでのアリーナ設計では、観客の歩行動線を設計する際の指針としてサービス水準を用いてきた。しかし、この方法は均質で一様な数値指標のため、多様な形状の通路やホワイエでの適用が困難だった。また、実際の混雑状況における観客の感性(快・不快の度合い)の予測もほとんど不可能だった。
そこで、今回の研究では、形状の多様性や、局所的かつ非定常な人流密度と、その体感的な快適・不快の度合いの連関を、被験者バイタルデータとの精査により明示した。
具体的には、首都圏の実地アリーナ施設を対象とし、アリーナ観客の入退場時の混雑様態の現況調査をした。
その結果、エリア・箇所ごとの群集密度の把握にあわせ、局所的かつ非定常に現れる歩行負荷を見出し、その事象の混雑評価を、人体装着型のバイタルセンサのデータおよび体感的な快・不快の度合いの関連性を見出した。
一般的に「混んだ状態」と人々が認識している密度下であっても、感性反応(押しボタン反応回数)毎に見たEDA(ヒヤリ反応)とECG(ストレス反応)を見ると、ストレスの現示度合いに特異な傾向が見られる。
例えば、下図の左上・下のグラフから、必ずしも群集密度が高い時にストレス度合いが高いわけではない事や、密度が低い時でも、突発的な遮り等による歩きにくさを感じる場合の方が顕著なストレス増になっている事が分かる。
また、幕間・インターミッション等の休憩時の行動、特に物販・トイレ利用などでは、動線を逆行する際の体感数値の評価も可能となった。
両者は、これらの結果をもとに、比較的大規模なホールやスタジアム設計において、より人を中心に据えたデザインソリューションが期待できるとしている。
なお、これらの研究成果は、日本インテリア学会論文報告集に掲載され、8月27日から30日に開催された日本建築学会大会で発表された。
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