「デジタル」はエネルギー問題を解決するのか、IoT基盤「EcoStruxure」が映し出すビジョン ―シュナイダーエレクトリック 日本統括代表 白幡晶彦氏インタビュー

エネルギー問題は人類にとって普遍的な課題だ。

人口増加に伴い、20年後には現在の約1.5倍のエネルギーが必要だと言われている。二酸化炭素の排出量削減のため、化石燃料から再生可能エネルギーへの「エネルギーシフト」も急務だ。

また、IoTや人工知能(AI)、ブロックチェーンなどの実装が進むとより強力なコンピューティングパワーが必要となり、そのための電力を賄う必要もある。これらのエネルギー問題に対し、最新のテクノロジーがどのような解決策をもたらすかが注目される。

今回紹介するシュナイダーエレクトリックは、世界100か国以上に渡り企業の「エネルギーマネジメント」を手がけている。シーメンスやGEと並ぶ世界大手の電力機器メーカーであり、特にビルや商業施設など低圧の分野においては世界トップのシェアを誇る。

また、同社は20年以上も前からIoT時代を見据え、”つながる機器”とソフトウェアを統合したソリューションで企業のデジタルトランスフォーメーションを支援してきた。

本年末には、IoTプラットフォーム「EcoStruxure(エコストラクチャー)」の新シリーズがリリースされる予定だ。電力インフラ、データセンター、工場など全6種のセグメントに対し、コネクテッドデバイス・エッジ制御・ソフトウェアを一気通貫で提供する。その内容とIoT時代における同社のビジョンについて、日本統括代表の白幡晶彦氏に聞いた(聞き手:株式会社アールジーン 代表取締役/IoTNEWS 代表 小泉耕二)。

シュナイダーのビジョン「Life is On」、エネルギーは「基本的人権」の一つ

デジタルはエネルギー問題を解決するのか、IoT基盤「EcoStruxure」が映し出すビジョン ―シュナイダーエレクトリック 日本統括代表 白幡晶彦氏インタビュー
シュナイダーエレクトリックの事業概要(提供:シュナイダーエレクトリック)

IoTNEWS代表 小泉耕二(以下、小泉): 御社の事業について教えてください。

シュナイダーエレクトリック 日本統括代表 白幡晶彦氏(以下、白幡): 最も大きな売上を占める(43%)低圧受配電制御機器(ブレーカー、スイッチ、リレーなどの製品)を中心としたビルディング事業は世界でもNo.1、その他中・高圧(18%)があり、15%を占めるセキュアパワー(IT)の分野ではUPS(無停電電源装置)や空調機を販売しており、日本では「APC」ブランドで知られています。そして、残りの約4分の1が、製造現場向けのオートメーション(インダストリー)製品です。

世界でバランスのとれた事業展開をしています。北米、西欧、アジア太平洋、それ以外の地域でちょうど4等分するような売上の分布です。フランスをオリジンとする企業ではありますが、社内では誰も自分たちのことをフランスの企業とは名乗りません。社員14万人の約3分の1がアジアパシフィックで、CEOのジャン=パスカル・トリコワは香港に常駐しています。いわば、“多様性の典型”のようなグローバル企業です。

一方、日本では「何をしているのかわかりにくい」企業かもしれません。日本には独自の規格もあり、非常に強い日本のメーカーさんもたくさんおられます。シュナイダーが日本で展開しているのは、そういった市場環境で差別化が図れるビジネスが中心であり、必要な分野においては日本企業と合弁企業をつくっています。

例えば低圧機器を販売しているのは富士電機(株式会社)との合弁会社(富士電機機器制御株式会社)ですので、シュナイダーの名前は出てこないのです。

デジタルはエネルギー問題を解決するのか、IoT基盤「EcoStruxure」が映し出すビジョン ―シュナイダーエレクトリック 日本統括代表 白幡晶彦氏インタビュー
シュナイダーエレクトリック 日本統括代表 白幡晶彦氏:1994年に日商岩井に入社し、自動車本部、南アフリカヨハネスブルグ支店などで勤務。2003年にゼネラルエレクトリックに入社し、GEセンシング&インスペクションテクノロジーズ代表取締役社長などを歴任する。2013年にシュナイダーエレクトリック入社、エコビジネス部門アジア太平洋地区統括バイスプレジデント、スマートスペース事業部グローバルコマーシャル統括バイスプレジデント、富士電機とシュナイダーの合弁会社である富士電機機器制御の副社長を歴任。2018年1月よりシュナイダーエレクトリック 日本統括代表に就任。

小泉: ロゴマークにもなっている、「Life is On」(ライフイズオン)にはどのような意味があるのでしょうか。

白幡: 私たちは、電力(エネルギー)は「基本的人権の一つ」であると考えています。電気は日々の生活のために必要ということだけでなく、いまではスマートフォンなどのデバイスを使えば教育も受けられる時代です。電気が「オン」であるということは、ライフが「オン」になる。これが、シュナイダーのビジョンです。

また、最近ではデジタル化に注力していることから、「Digitizing and Powering」を戦略として掲げています。

「Digitizing and Powering」という言葉を使うことになった背景には、面白いエピソードがあります。シュナイダーのインダストリー部門の人たちが主張するのは、「Powering Digitization」です。デジタイゼーションをパワーリングにする、つまりシュナイダーがデジタイゼーションあるいはデジタルファクトリーを牽引していくのだ、という意味ですね。

一方で電力部門の人たちは、シュナイダーは電力の会社なのだから、「Digitizing Power」ではないか、と言うわけです。電力マネジメントをデジタイジングしていく、という考え方です。

結局、どちらも譲れないということになり、「Digitizing and Powering」という両者の意図をくんだ表現に落ち着いたのです。このエピソードは、当社をよく表しています。

次ページ:世界のエネルギー問題、その対応策は2つ

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