昨今、地方の人口構造の変化や物流ニーズの拡大などを背景に、交通分野の課題解決策としてMaaSに注目が集まっている。
奈良県には、東大寺をはじめとする8つの世界遺産など観光資源があり、毎年数多くの外国人観光客が訪れている。市内を訪れる外国人観光客数は平成19年からの10年間で約4倍に増加するなど推移しているが、著名な観光名所がある東エリアでの短時間滞在が多く、域内消費につながりにくいという課題を抱えている。
今後さらに増加が見込まれる訪日外国人に向けて、奈良の東西に跨る周遊を促し、滞在時間や域内消費の拡大につなげていくことが、地域経済活性化に向けた重要なテーマとなっている。
株式会社電通国際情報サービス、株式会社デンソー、ActiveScaler Inc.(以下、アクティブスケーラ)、奈良交通株式会社および一般社団法人運輸デジタルビジネス協議会は、訪日外国人を主な対象として、旅の出発地(シンガポール)から目的地(奈良)まで、飛行機、リムジンバス、奈良市内周遊バス、タクシーなどの交通網をスマートフォンで検索・予約・決済できる観光型MaaS「くるり奈良」の実証実験を、2019年10月から12月末まで実施する。
同実証実験では、インバウンド観光に焦点を当て、一次交通(飛行機)と二次交通(リムジンバス、奈良市内周遊バスなど)をシームレスに統合した観光型MaaSにより旅の利便性向上を図る。また、出発前や旅行中の観光客にAIを活用して奈良の魅力を伝える画像を配信し、周遊や滞在時間拡大を促す仕組みを構築する。
具体的には、奈良各所のSNS映えする画像をAIが自動配信するWebアプリ「くるり奈良Web」と、気に入った場所への交通手段の検索、チケット予約・決済、目的地ナビゲーションなどの機能を提供するスマートフォン向けアプリ「IMRIDE」を用いて、シンガポールから奈良への誘客・移動・周遊をシームレスに連携する。各アプリの特長は以下の通り。
- Webアプリ「くるり奈良Web」
- 奈良市観光協会が持つ観光情報を配信
- アンケート登録・収集
- スマートフォン向けアプリ「IMRIDE」
- 住所、施設名の入力による奈良市内へのルート探索
- くるり奈良Webで気に入った画像の場所へのルート探索
- 海外と日本国内間の航空路線予約・決済
- 関西国際空港、バスタ新宿と奈良市間の高速バスの予約・決済
- 奈良市内周遊パスの購入
- 各種交通のチケット表示(一部路線ではQRコードを用いたバスチケットのもぎり機能有り)
これにより、訪日外国人のユーザー体験向上を図るとともに、域内周遊や滞在時間の少なさといった、奈良エリアの抱える課題を解決するサービスの創出を目指す。
なお、同実証実験における各社の役割は以下の通り。
- 電通国際情報サービス
- デンソー
- ActiveScaler Inc.
- 奈良交通
- 運輸デジタルビジネス協議会
実験全体の企画・プロデュース、くるり奈良Webの開発、スマートフォンアプリや他サービスとの連携を担う。
パートナー企業であるアクティブスケーラ社と連携する。
同実証実験ではIMRIDEの開発を担う。同実証により今後はシンガポールからスタートして順次アジアの主要都市へのサポート拡大を予定している。
リムジンバス、奈良市内の路線バス網など実験フィールドの協力を担う。
同実証実験は、協議会のワーキンググループの一つである「WG03 MaaSへの取り組み」の一環として実施され、協議会は参加各社間の調整とアドバイザリーを担う。
また、同実証実験には公益社団法人奈良市観光協会が奈良の観光情報提供で協力する。
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