東日本大震災では、自分がいる場所まで津波が来るとは思わなかったといった、安全への過信や災害情報の伝達不足が避難の遅れにつながった事例が見られた。
国立大学法人東北大学災害科学国際研究所、国立大学法人東京大学地震研究所、富士通株式会社、川崎市は2017年11月より「川崎臨海部におけるICT活用による津波被害軽減に向けた共同プロジェクト」を進めており、地震発生後に時々刻々と入手される情報を基に、現在位置の浸水可能性を判定するAIを構築し、AIによる判定結果を各個人のスマートフォン画面に表示することで、避難を後押しするスマートフォンアプリの開発を行っている。
そして今回4者は、11月17日に行われる川崎市津波避難訓練において、津波避難におけるAI活用の実証実験を実施する。今回の実証実験は同プロジェクトの一環として実施するもので、2018年12月に行った津波避難におけるICT活用の実証実験に続き、第二弾となる。
同実証実験では、川崎市立四谷小学校及び周辺地域において約80名の住民がスマートフォンアプリ(試作版)を利用した避難訓練を体験することで、スマートフォンを通して提供された災害情報が避難行動に与える影響や、効果的な情報提供手段のあり方について検討する。災害想定は神奈川県が設定した「慶長型地震モデル」による津波を想定している。同実証実験で活用する技術は以下の通り。
- 浸水可能性を判定するAI
- 避難を後押しするスマートフォンアプリ
津波が陸域に到達するまでに観測される、沖合や他地域の沿岸線での津波波形などを基に、陸域の各地点における浸水可能性を予測するAIを株式会社富士通研究所などが開発した。同アプリでは、津波警報やハザードマップを踏まえた避難勧告等に加え、AI予測に基づく現在位置の浸水可能性を表示する。
東日本大震災では、自分のいる地点まで津波が来るかどうかが分からなかったことが避難の遅れにつながった例があった。その一方で、他者の避難行動を目撃したことが、避難開始のきっかけになった例も見られた。同アプリでは、現在地から避難場所までの地図と共に、AIによる浸水可能性の判定情報、周辺避難場所への避難完了者数などを伝えることで、避難の意思決定を後押しする。
また、2018年12月の実証実験において有効性が確認された、避難経路上の通行困難地点の情報等を避難者が投稿・共有する機能も提供する。
同プロジェクトは実証実験で得られたデータや知見を、ICTを活用した防災対策の検討に活かすことで、国内外の地域防災力の強化に貢献する。
プレスリリース提供:富士通
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