広がるデータ連携基盤「FIWARE」によるスマートシティへの取り組み ―NECインタビュー

コルドバ県のスマートシティプロジェクト「Enlaza」

代表 小泉耕二(以下、小泉):今回のコルドバ県でのスマートシティプロジェクトについてお聞かせください。

NEC 菊池晃治(以下、菊池):まずはコルドバ県の概要について説明します。コルドバ県はアンダルシア自治州の中にございます。人口は県全体で約80万人、そのなかに77の自治体があります。首都はコルドバ市で、市自体はスペインで12番目に大きい都市です。主に産業は観光業に加えて、オレンジやオリーブといった農業、あとは製造業で成り立っています。

次はプロジェクトについて説明します。プロジェクト名は「Enlaza」。コルドバ地域でサスティナブル=持続性の高いスマートシティを作る、というプロジェクトです。

主要なステークホルダーは4つ。1つ目は弊社を含む、プロジェクトを技術的に実行するコンソーシアムです。これは弊社のスペイン現地法人NEC Iberica社、スペインの地元企業である「Sociedad iberica de Construcciones Electicas」という会社の2社で組んでいます。

2つ目は「Red.es」。これはMinistry of Economy and Business(MINECO) of Spainの政府機関です。

EUが2010年にデジタルアジェンダ(Digital Agenda for Europe)というものを発表しており(若林注:欧州デジタルアジェンダは2010年5月に公表。総務省ホームページより)、それをベースにスペイン政府もデジタルアジェンダを決めてやっていますが、この組織はそれを実現するというのをミッションに持っていて、特にスマートシティに関してはこのプロジェクト以外にも他の自治体のプロジェクトを支援しています。今回のプロジェクトに関しては彼らがオーナーになります。

3つ目はDiputacion de Crdoba。コルドバ県には77自治体があると申し上げましたが、この中で首都のコルドバ市以外の自治体から形成される共同体です。これが本プロジェクトの実際のユーザです。

4つ目がコルドバ県の自治体でDiputacion de Crdobaの配下にある自治体。特に今回のプロジェクトでは人口20,000人以下の自治体を対象にスマートシティソリューションを提供していきます。

スペインはマドリット、バレンシア、バルセロナ、この三大都市を除くと経済基盤は基本的には北が強くて、南が若干弱いと一般的には認識されています。その中でスマートシティ・データ利活用を実現しようと思っても、実際は最初の資金や投資のところを自己調達できない自治体が多いのです。そのような自治体をRed.esのような政府機関が支援をしています。

特に今回のプロジェクトはこのRed.esにとっても非常に重要な位置づけになっています。ある1つの都市・自治体を対象にいるのではなく、複数の自治体を対象にしているからです。これは、このRed.esのプロジェクトの中でも初めての試みになります。

先ほどスペインは北が経済的に強く、南が弱い、しかも南の場合はスマートシティなどをやるときに最初の投資が難しい、という話をしましたが、さらにその中でも人口20,000人以下の自治体と、ここはやはり自活してスマートシティ・デジタルトランスフォーメーションを立ち上げていくのはなかなか難易度が高いです。

彼らに対して弊社のクラウドの強みを活かして、ある程度シェアドサービスのような形で提供することで、スペインの自治体のデジタルトランスフォーメーションを成し遂げていく、という一つの成功モデルを本プロジェクトで目指しています。

「FIWARE」が採用されたポイント

小泉:採用されたポイントはどこにあるとお考えですか。

菊池:1つは「FIWARE」の技術と欧州における実績です。「Red.es」の技術要件の中でオープンなプラットフォーム、そしてNGSIサポートというのが要件に入っていましたが、「FIWARE」はそれに当てはまります。

そしてスペインのサンタンデール、ポルトガルのリスボンで「FIWARE」を活用しながらスマートシティを実現しているという実績があります。

2点目はスペイン企業とのタイアップです。スペイン政府は外資のベンダーが入って推進することより、スペイン企業も含めた形でのエコシステムを推奨しています。

先ほどのデジタルアジェンダの中にコラボレーション、あとはシングルマーケット、あとはスキルという項目が入っています。それに沿った形でスペインの企業、または海外との企業とのコラボレーションというのを高く評価していただいています。

小泉:これは複数社からの提案があったのですか。

菊池:そうです。入札で決まりました。

小泉:例えば廃棄物管理システムだとか、設備管理システムなどはスペイン側の要件なのですか。

菊池:はい、本プロジェクトに関してはこれが要件でした。高田が申し上げた通り、自治体や都市によって課題が違うので、スペインでこのような案件をいくつかやらせていただいていますが、共通の部分もあれば、かなり自治体特有の問題もあります。

例えばコルドバの場合は、今回入れるシステムの中で設備管理というものがあるのですけれど、その設備は何か、という問題がありました。

政府の定義では年間100ユーロかかっているものはインベントリー管理しなくてはいけないので全て設備になるのですが、それをリスト化した時に出てきたのが、ロバと馬。これも設備として自治体が管理しなくてはいけない。これは非常にこの地方特有の話であると思いました。

小泉:先ほど採用が決まった要因の中に欧州の実績を上げていましたが、今までやってきた経験が活かされる部分というのは、システムの部分で見ると再利用性があると思っていいのでしょうか。

菊池:はい、その部分もございます。

小泉:どういうところが再利用性が高くて、どういうところが再利用性が低い、というのはありますか。

菊池:横展開が可能なのは、我々が開発したソフトウェアの非常に主となる機能ですね。ただし市ごとにある程度フレームワークは対応できますけれども、例えばそこの自治体ごとの本当の課題は何なのか、というのを見極める部分は、ある程度手間をかけてやらなくてはならないと思っています。

小泉:やはり要件を聞くところが一番大変だということでしょうか。

菊池:そうですね。再利用が難しい理由としては、スタンドアローンで作ってもFIWAREを使う意味が見いだせず、コスト効率も悪い、ということがあります。いま既存の自治体が使っているアセットは技術面でも運用面でもインテグレートされなければいけないと思っています。

ですがやはり自治体ごとに持っているもの、やり方も違う部分がございますので、それは案件ごとにお話しさせていただくことが多いですね。

次ページは、「今後の戦略

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