広がるデータ連携基盤「FIWARE」によるスマートシティへの取り組み ―NECインタビュー

官民連携のプラットフォーム構築

高田:FIWAREは欧州が2011年から約400億円の官民ファンドを活用して培ってきたプラットフォームです。実証実験にかなり投資をしているので、非常に出来は良いのですが、日本に対応していないところもあります。その点に関してはNECが日本向けに使いやすいような形にして提供しています。

小泉:FIWAREは構造的には多様な分野のデータを連携させようとしていますよね。しかし実証実験の経緯などを見ていると、個別最適の話になりがちな気もしています。1つのプラットフォームとしてみたときに、上手く複数のデータを連携できるようなアーキテクチャになっているのか、という点が気になります。

高田:内閣府のスマートシティに関する公募で「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術におけるアーキテクチャ構築及び実証研究」というものがありました。内容はアーキテクチャの設計とそのアーキテクチャを検証するための地域実証ですが、8月2日に採択結果が公表され、アーキテクチャ設計に関しては6社のコンソーシアムで採択が決まり、NECが代表をすることになりました。

その中でAPI、データモデルなど、先ほどお話にあったデータ連携を行うスマートシティに必要な設計図をまとめよう、と考えています。

FIWAREはマイクロサービス型の部品の組み合わせです。例えば防災と交通と観光などのデータモデルをしっかりと決めてアーキテクチャの設計をしながら、部品を組み合わせていく。その一方でスケーラビリティをどうするのか、セキュリティをどうするのかを考える、という形で開発と構築は連携し、別に行うことになります。
 ※マイクロサービス:機能に沿った複数の小さいサービスを疎結合の集合体として構成するサービス指向アーキテクチャを指す。このサービスの1つをマイクロサービスと呼ぶ。

FIWAREの良い点はオープンソースとであることと、データモデルが標準化されて共通のAPIで連携ができればデータエクスチェンジができるプラットフォームであることです。
ですから、AWSとAzureをFIWAREで繋げて組み合わせるという考え方もできます。NECとしてもIoTのプラットフォームは別に持っています。FIWAREは他のプラットフォームと競合するものではなく、ある意味で接着剤だと捉えてください。

データ部分の設計をしている中で、共通のAPI上であればソフトウェアが再利用できますし、NGSI に準拠したデータのエクスチェンジもできます。そのための仕掛けがFIWAREだと考えていただければ良いと思います。

小泉:FIWAREはシステムの塊というより、概念モデルのようなものとして位置づけた方が良いのでしょうか。

高田:FIWAREはマイクロサービス型のソフトウェアモジュールの集合体です。したがって、その地域ごとのニーズに合わせてスマートシティのプラットフォームを用意することができます。

例えば認証は別のものと組み合わせるなど、適材適所で必要なところにFIWAREのコンポーネントを利用して構いません。その点を理解していないと、FIWAREの機能をまるごと導入するか、あるいは全く導入しないのか、という話になってしまいますがそういうことではないのです。

例えばトラックの走行状況と公共交通の運行情報を上手く連携させたい、といった場合には、FIWAREによるプラットフォーム間の連携が有効になります。そうすると官と民の壁を越えて同じ枠組みの中でエコシステムやバリューチェーンが出来上がる、という話にまで広がります。

小泉:官にしか取れないデータもありますからね。

高田:はい。逆に言えばこれから先、行政職員が少なくなる中で、官だけで出来ることにも限界がでてきます。そこで民間の力を借りてデータを活用しよう、ということになった場合、どうプラットフォームを連携しようか、という方向に行くと思います。

次ページは、「国内地域ごとの「FIWARE」取り組み

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