日本航空JALは、様々な企業と提携を行い、テクノロジーを活用することでサービスの向上や従業員の作業負担軽減や効率化を図ろうとしている。
今回は今年に入ってJALが発表しているテクノロジーを活用した施策について紹介したい。
位置情報を活用してサービスの向上を図る
JALは、野村総合研究所、サトーと共同で「JAL Lounge+」という位置検知が搭載されたスマートフォン用アプリの開発を行った。
JAL Lounge+を活用した実証実験を、2019年12月から2020年2月の間、成田空港国際線JALファーストクラスラウンジにて行うという。
JAL Lounge+では、あらかじめファーストクラスラウンジの利用状況を確認することができる。
そしてスマートフォンから食事のオーダーをすることができ、位置情報がわかるため、スタッフが座席まで運ぶ配膳サービスの検証も行っていくという。
また、シャワールームの予約をしておけば順番になった際に通知してくれる機能や、スタッフの呼び出し機能などがある。
ラウンジ内の効率化を測ることで、顧客もスタッフもスムーズな活用ができると考えられる。
空港内の移動もスムーズに
JALは自動運転技術が搭載された電動車椅子のWHILLを、要望のある方に空港内で使用してもらうという試験走行を実施している。

WHILLの使用方法は、搭載されているタブレットのスタートボタンをタップし、行きたい箇所まで利用者が操縦していく。
そして利用が終了した際に終了ボタンを押すと、自動で返却場所まで走行していくというものだ。
重たい荷物を持っている方や高齢者など、様々な人が快適に空港を移動できるための施策だ。
参考URL:WHILL HP
ベテラン人材の不足に手を打つ施策
次に紹介するのは業務効率化のための実証実験だ。
JALはNECが提供する「スターター向け実証パック」を活用し、屋内外でのIoTの有用性を検証する実証実験を2019年7月~8月に行った。
具体的には荷物コンテナ運搬車の位置把握と、作業員の動線把握だ。
1つ目の荷物コンテナ運搬車の位置把握では、屋外での検証を行った。
荷物コンテナ運搬車は、広大な空港内のエリアを走行しており、台数には限りがある。そこで必要な場所へ必要なタイミングで荷物を運ぶ必要があり、運搬車にGPSデバイスをつけ、LoRaWANのネットワーク構築を行い、どこに運搬車がいるのかを把握した。
その結果、羽田空港屋外のほぼ全てのエリアをカバーできたとのことで、LoRaWANという、機器の導入を最小限に抑えられる通信で、運搬車の位置が把握できることを確認した。
2つ目の実証実験は屋内における実証実験で、ベテラン整備士がどのように動いたかという動線把握を行うというものだ。
ベテラン整備士の動線は、新人へのノウハウ継承や作業効率のための重要な情報だとして、Bluetoothネットワークを構築した屋内で、Bluetoothデバイスを装着した整備士を想定した人間が必要な場所へ動いてみた。
その結果、動線把握が可能であることの確認が取れた。
今回は運搬車の位置と、作業者の動線という前提での実証実験であったが、通信環境と使用したデバイスの有用性が実証されたことにより、様々な用途に応用できると考えられる。
5Gから生まれる新たなサービス
また、JALはKDDIと提携し、5Gの活用を強めていく方針を打ち出している。
すでに5G専用端末によるタッチレス搭乗ゲートや、VRなどの高精細かつ大容量コンテンツの情報配信などの実証実験は行われている。
そこからさらに5Gを活用したサービスの実用化拡大に向けて、両社のオープンイノベーション拠点である、「KDDI DIGITAL GATE」と「JAL Innovation Lab」を利用し、研究開発を行なっていくという。
特に整備作業をする際にはベテランの技術者が必要とされるが、必要な箇所に必要な作業者がいるとは限らない。
そこで現地にいる作業者がベテラン技術者に対しカメラで映像を送信し、その映像を見ながらベテラン技術者は的確な作業指示を送ることができる。
今後人手不足が懸念される工程に対し、先立って実証実験を行い、実用化を目指していると考えられる。
このようにJALでは、様々なテクノロジーや機械を活用し、顧客の満足度と従業員の働きやすさの向上のための施策を打ち出している。
将来空港がさらに洗礼され、便利になっていく未来を想像し、そこに付随するサービスのあり方も変わっていくのではないかという期待を感じる。
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