従来自治体の住民情報システムは各自治体で独自に構築し、維持・管理、制度改正対応なども個別に対応しており、財政的・人的な負担が大きな課題となっている。また、帳票様式も各自治体で異なることから、それらを作成・利用する住民・企業に対しても大きな負担が生じており、自治体の行政手続きのデジタル化に向けた住民情報システムの標準化・共通化が重要となっている。
日本電気株式会社(以下、NEC)は、自治体のデジタル改革を全面的に支援するため、自治体向け住民情報システムの製品開発を強化することを発表した。
具体的には2020年12月25日に閣議決定された「デジタル・ガバメント実行計画」をふまえ、2020年9月に総務省が第1.0版を公開し、今後改定予定の「住民記録システム標準仕様書」をはじめ、各業務主管府省が策定する標準仕様や今後の改定にも準拠した住民情報システムの製品開発を開始し、2022年度から順次提供を開始する。
住民情報システムが強化したことにより、NECが従来より提供する大規模自治体向け住民情報システム「COKAS-i」と中小規模自治体向け住民情報システム「COKAS-R/ADⅡ」において、総務省が公開した住民記録システムの標準仕様に対応できるようになった。これによって、中小規模自治体から政令指定都市まで、標準化に対応したシステムへのスムーズな移行を実現する。
また、税務システム、介護保険システム、障害者福祉システム等の各主管府省から公開予定の住民記録システム以外の標準仕様についても、COKAS-i及びCOKAS-R/ADⅡをはじめとする地方公共団体向けソリューションGPRIME製品群にて対応するとしている。
さらに、NECがこれまで有してきた中小規模から大規模までの自治体約200団体に対する住民情報システムのクラウドサービスの提供実績を生かして、今回新たに示された「(仮称)Gov-Cloud」にも積極的に対応するとのことだ。
他方、住民情報システムの強化ポイントと併せて、転入出手続きのデジタル化・マイナポータルAPI連携機能を強化したNEC スマート行政窓口ソリューション等の関連ソリューションや、新しいデータ駆動型行政をめざして住民情報システム保有データを活用するソリューション等、製品ラインナップを強化する。
- NEC スマート行政窓口ソリューション
- 新しいデータ駆動型行政をめざして住民情報システム保有データを活用するソリューション
従来は引っ越しの際、住民は自治体の窓口に手書きの異動届と転出証明書を提出し、職員は紙の書類で処理していた。同ソリューションでは、住民記録システム標準仕様書で新たに定義された、今後転出証明書に印字されるQRコードを利用することで、転出情報を自治体間でデジタル情報としてやりとりし、転入先自治体の住民情報システムに反映できる。
これによって、職員の作業時間・住民の待ち時間を最大で5割短縮できるという。さらに、住民自身がスマートフォンなどを活用して簡単にデジタルの異動届を作成でき、作業の簡素化が期待できる。
また、住民向けサービスとして、マイナポータルの自己情報開示機能と連動して申請手続きを案内する仕組みを新たに開発する。マイナポータルの自己情報開示機能とは、自治体や国の行政機関等が保有する自身の個人情報を取得できる機能である。本人同意のもと、自治体がこの機能を活用して住民ら自己情報の提供を受けることで、所得情報等の個人情報を判断基準とするような複雑な申請でも住民に対して適切に案内できる。
住民情報システムの標準化・共通化によってより良質な行政データが蓄積されることで、これからの行政は、過去データから将来の問題発生を予見して問題が起きる前に対応する予測・予防型サービスや、個人情報等を安全かつ有効に活用したアウトリーチ型サービス、データに基づく精度の高い政策立案や評価といったEBPM(Evidence-based Policy Making)への取組みが一層かつ広域的に求められることになる。
NECは、これまで自治体との実証実験やアイデアソン、総務省の調査研究事業等に積極的に取組んできた。そこで培ったデータの匿名加工や可視化、分析といった技術と実績を利用して、新しいデータ駆動型行政を目指す自治体を住民情報システム保有データ活用ソリューションのサービス提供によって支援する。
NECはこれらの住民情報システム関連の製品について2025年度までに400団体への提供を目指すとのことだ。
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