近年、ゲリラ豪雨や台風などにより河川が氾濫するなど深刻な被害が多発している。特に自治体の管理する中小河川においては、集中豪雨の影響で水位が急激に上昇し短時間で被害が拡大する災害が発生しており、水害対策が急務となっている。中でも地域住民に対して避難指示を行う自治体においては、気象予測のみならず今後の降雨による河川の状況変化を迅速に把握するニーズがより高まっている。
従来の河川水位予測では、河川測量データや過去の雨量および水位、流量などの観測データを用いるが、中小規模の河川や水位計が新規に設置された場所では、これらのデータ量の不足などから水位予測が困難だった。
富士通株式会社は、水文学(※1)における流域からの雨水の流出を表現した流出関数法による関数を作成し、過去の雨量や水位データを用いた機械学習により最適なパラメーターを導き出す水位予測モデル(数理モデル)を株式会社富士通研究所と共同で構築の上、同水位予測モデルを用いて河川水位を予測するシステム「FUJITSU Public Sector Solution Social Century Resilience AI水管理予測システム powered by Zinrai」を開発し、自治体や企業向けに販売を開始した。
詳しい特長は以下の通り。
- AI予測機能で、わずかな過去の雨量、水位データから河川水位予測をリアルタイムに実現
- 気象庁雨量データ変換機能により、予報雨量を関連雨量局地点の予測雨量にリアルタイムに変換
- コンテンツ作成機能で水位予測結果を可視化し、迅速で的確な意思決定を支援
同システムに学習モデルとなる同水位予測モデルを組み込み、予測対象の水位局と関連する雨量局の現在の水位、雨量データ、および気象庁から受信する予報雨量を基に同システムで変換された関連雨量局地点の予測雨量から、10分ごとに6時間先までの予測水位をリアルタイムに算出する。
また、河川改修や洪水などに伴う環境変化に対しても、変化後の少量の雨量や水位のデータを再学習させることで、水位予測モデルを短期間で最適化することができる。
気象庁雨量データ変換機能により、気象庁からオンラインで受信する降水ナウキャストや降水短時間予報(※2)の1kmメッシュごとの予報雨量の位置情報をもとに、リアルタイムに関連雨量局地点の予測雨量に変換する。この予測雨量をもとに、AI予測機能により水位を予測する。
コンテンツ作成機能は、データベースから取得した水位予測結果を自動でグラフ表示する機能である。各水位局の基準水位(※3)の超過予測を危険度予測マップとして表示、可視化することで、現場出動などの対応や避難勧告発令に向けた迅速な意思決定を支援する。
同システムにより、自治体では、迅速かつ的確に現場出動や避難勧告発令の意思決定が可能になるほか、企業では自社の水防活動など、水害における防災や減災に向けた取り組みを推進する。
なお、同システムの販売価格は600万円(税抜)である。
※1 水文学:自然界における水の循環を中心概念とする学問分野。
※2 降水ナウキャストや降水短時間予報:気象庁が発表している降水予報。降水ナウキャストは1時間先まで、降水時間予報は15時間先まで(本システムでは6時間先までを利用)を予報するもの。
※3 基準水位:水防対応や住民避難の発表の目安として河川管理者が設定した水位。
プレスリリース提供:富士通
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