近年、三重県伊勢市中心市街地の各商店街では、空き店舗の増加が一つの課題となっている。伊勢まちづくり株式会社は各商店街組織と連携し、エリアの活性化や新規出店者のサポートに取り組んできた。しかし、2020年以降は新型コロナウィルス感染症の流行により各商店街は大きな打撃を受けている。伊勢市の中心市街地活性化のために、多くの人が訪れる街づくりに繋がる新しい取り組みが必要不可欠となっている。
株式会社EBILABは、伊勢まちづくりから委託を受け、伊勢市の中心市街地にAIカメラを用いた通行量調査システムを導入した。
具体的には、2021年12月13日~2024年3月31日の期間、伊勢市駅前商店街や明倫商店街、伊勢高柳商店街などが位置する伊勢市の中心市街地9箇所にAIカメラを設置し、歩行者の通行量ならびに特徴を計測する。収集したデータは、EBILABが開発したBIツール(※)「TOUCH POINT BI」で分析・ビジュアライズし、考察を加えることで、伊勢市中心市街地の賑わい・盛り上がりを創出するためのマーケティングや施策検討に活用する予定だ。
設置するAIカメラは3種類で、ロケーションや設置エリアの特性に合わせて最適なモデルを使い分ける。各AIカメラの詳細および用途は以下の通り。
- AIZE Research(株式会社トリプルアイズ)
- Vieureka(パナソニック株式会社)
- VIVOTEK SC8131(ビボテックジャパン株式会社)
伊勢市の中心市街地7箇所に設置する。取得した画像データはクラウドシステム「AIZE Research」に送られ、男女比や年齢といった通行者の属性を分析した後、TOUCH POINT BIで更なる分析を加える。
伊勢市の中心市街地では大きなお祭りから個人店主催のイベントまで、年間を通して様々な催事が行われている。訪問者数や性別・年齢といった属性を催事の開催前後で比較・分析することで、より集客に繋がるイベントを企画・計画立案し、エリアへの人の流入数を増やすことに活かす予定だ。
伊勢市の中心市街地3箇所に設置する。目立ちにくいデザインであることから、AIカメラの設置が伊勢市の市街の外観に影響を及ぼす懸念のある場所に設置する。
本体に搭載したCPUにより画像解析処理をカメラ本体で実行するため別途パソコンを準備する必要がなく、設置に制限があるロケーションに有効だ。また、画像解析後の認識結果のみをクラウドに送るのでデータ量を小さくできるほか、プライバシーの保護にも繋がる。通行量や性別・年齢といった通行者の属性を分析することで、イベントの企画・計画立案や人の流入数を増やすことに活かす予定だ。
伊勢市の中心市街地6箇所に設置する。リアルタイムによる人数カウント機能を備えており、通行量の変化や混雑状況を24時間365日測定することができる。通行者の属性の取得はできないが、比較的通行量の多いロケーションで正確な通行量を測定し、人の流れをつくり出す施策検討に活かす予定としている。
これまでも目視による通行量の計測は行われていたが、年に1回であるため、マーケティング活用を目的とした定量データとしては不十分だった。しかし今後は、AIカメラを活用することで、24時間365日人の流れを計測できることはもちろん、天気や曜日ごとの人流の特徴やイベント実施時の効果測定が従来より高精度で可能となり、その結果分析に基づいてより効果的な企画運営に貢献することができる。
なお、同システムの導入は「第2期伊勢市中心市街地活性化基本計画」で定められた中心市街地区域の活性化を図ることを目的とした取り組みの一環である。
※ BIツール(Business Intelligence tools):企業が大量に蓄積したデータから必要な情報を集約し、ひと目でわかるように分析するツール。
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