株式会社DATAFLUCTは、衛星データ分析による水田モニタリングに取り組んでいる。このプロジェクトの一部は、国立研究開発法人 国立環境研究所の依頼を受けて実装を進める取り組みで、気候変動の一因であるメタンガス排出の中でも「水田由来の排出」に着目し、水田の分布や状況を正確にモニタリングすることで、排出量の削減に貢献することを目指している。
そして本日、DATAFLUCTは、プロジェクトのフェーズ2として、新たに「広範囲かつ高分解能の水田マッピング」および「稲作状況を推定するアルゴリズム」を開発したことを発表した。
今回のプロジェクトでは、マイクロ波の跳ね返りを基にすることで、天候や時間帯に左右されない「SAR画像」(Sentinel-1衛星およびALOSのデータ)と、光学センサで太陽光を観測し、地上からの反射・放射される強度の違いで物体を識別する「光学画像」(Sentinel-2衛星のデータ)を活用し、水田をモニタリングすることを目指す。
フェーズ1では、東南・東アジアの限られた地域における水田域抽出が実施されたが、フェーズ2では、空間分解能250m相当までメッシュを細かくした水田マッピングと、稲作状況を把握するための「稲作カレンダー」を開発。時系列の衛星データを活用して稲の生育状態を把握し、移植日と収穫日を推定する。
水田マッピングでは、フェーズ1で開発された水田マッピングのさらなる精緻化・広域展開を行い、稲作が盛んなアジアモンスーン地域の水田由来のメタン排出の把握を行った。
入力データには、移植・収穫時期前後の地表面変化を検知するSAR画像や、地表の植生や水面などに反応する光学画像から計算できる物理変数などを使用。畳み込みニューラルネットワークを応用したモデルの推定結果に基づいて、アジアモンスーン地域における空間分解能250m相当の水田マッピングを開発した。(トップ画参照)
これにより、既存研究やフェーズ1の空間分解能350mと比較し、100m分解能が向上した。
「稲作カレンダー」では、SAR画像から取得した後方散乱係数(VH)と、光学画像から取得した植生活性度の指標「EVI」および、稲の生育や収量にとって感度の高い指標「NDYI」、それぞれの時系列データを用いて、稲の移植日と収穫日を推定する。
既存の稲作カレンダーは、統計データなどをもとにした「国単位」のもので、水田由来のメタン排出を推定するためにはより細かいメッシュの水田状況を把握する必要がある。そこでこのプロジェクトでは、衛星データを活用することで、メッシュ間隔0.5°×0.5°のより細かい稲作カレンダーを開発した。

なお、今回のプロジェクトで開発された水田マッピングと稲作状況のデータは、地理空間情報プラットフォーム「TOWNEAR」内のサービス「TOWNEAR GHG monitoring」に収録し、ユーザー向けに公開される。このデータは気候シミュレーションのほか、水田管理などを実施する事業者がメタン排出削減に取り組む際の情報としても活用することができる。
今後DATAFLUCTは、アジアモンスーン地域だけでなく、アメリカやヨーロッパなどの水田マッピングならびに稲作状況の推定技術をグローバル展開することを目指すとしている。
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