近年、気候変動により台風や集中豪雨などに起因する河川の水害が激甚化する傾向があり、正確かつ迅速に水位を把握して対策を打つことが求められている。一方で、対策に必要な河川の水位を把握する水位計の導入には高額な費用や大規模な設置工事が伴うほか、メンテナンスなど人の稼働がかかるという課題がある。
株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)、NTTコムウェア株式会社は、AIを活用した河川・ため池水位監視ソリューションのトライアル提供を全国の法人企業・自治体向けに開始した。同トライアルを通じて、AI機能やアプリケーションの使い勝手などの改善を行い、2024年3月までのサービス提供開始をめざすとしている。
同ソリューションは、物理的な水位計を不要とした水位監視ソリューションである。仮想水位計とAI技術を活用し、あらかじめ設定した水位を超えると自動的に河川管理を行う担当者へ通知し、管理者は管理画面上に可視化された河川のリアルタイム映像や水位の時系列データが閲覧可能となる。
具体的には、河川やため池にカメラ付きの専用機器を設置し、撮影した映像上に仮想水位計を表示させ映像認識AI技術を活用することで、現在の水位をリアルタイム、かつ正確に把握することができる。
水位の判定は、セグメンテーションAI技術(画像を分割して映像を認識する技術)を用いて仮想的に設定した水位計に表示された水面と陸地の面積比から水位を割り出す独自のアルゴリズムによって算出している。仮想水位計を複数設置することで、AIの判定精度を高めることも可能としている。
また、管理者はクラウド上の管理画面にて映像とグラフから水位の確認とともにAIの各種設定を行うことができる。予め設定した危険水位を超えた場合、メールやSNSで通知することが可能なほか、動画配信サイト上でライブ配信することも可能なため、例えば映像データを住民などへ広く展開することで、注意・警戒を促す。
同ソリューションには、NTT Comが提供する、AIによる映像解析の基盤(映像エッジAIプラットフォーム)の「EDGEMATRIX」と、水位判定AI技術が用いられている。EDGEMATRIXは、大容量の映像データをEdge AI Box(エッジコンピュータ)内で処理することができる。そのためより速く映像を解析・水位判定し、配信することが可能だ。
また、水位判定AIは、セグメンテーションAI技術を用いて、仮想的に設定した水位計に表示された水面と陸地の面積比から独自のアルゴリズムによって水位を算出する技術である。社会インフラメンテナンスのソリューションブランド「SmartMainTech」シリーズとして、ドコモのAI技術と組み合わせて開発された。Edge AI Boxにインストールされた映像解析AIアプリで、撮影された河川やため池の映像を解析し、その結果をSmartMainTechクラウドへ連携する。業界特化型のAI技術やデータ解析、可視化技術を搭載している。
同ソリューションを活用することにより低コストで導入できるため、小さな河川やため池にも導入しやすい。また、水害等で水位計自体が破損する恐れがなく、水位計のメンテナンス稼働を軽減する。
同ソリューションにおいて、ドコモはSmartMainTechに活用されているAIの開発、NTT ComはEDGEMATRIXサービスおよびカメラやEdge AI Boxの提供、NTTコムウェアはSmartMainTechソリューションブランドのAIアプリの開発を行った。
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