近年、自然災害の頻度や深刻さが増しており、被災状況を素早く的確に把握することが重要だ。
しかし、災害発生時に関係省庁が公開している降水量分布や震度分布、住民から寄せられる被害や安否についてのテキスト情報には、詳細な被災状況や場所の情報は十分に含まれていないといった課題がある。
一方、自治体などへ提供される被災現場の画像(スマートフォン、ドライブレコーダー、街頭カメラなど)には、詳細な被災状況や場所の情報が含まれているため、現場画像の活用が期待されている。
こうした中、日本電気株式会社(以下、NEC)は、大規模言語モデル(以下、LLM)と画像分析により、被災状況を把握する技術を開発した。
従来、画像の絞り込みには画像認識技術が広く用いられてきたが、あらかじめ学習した対象物しか認識できず、絞り込める画像が限られていた。
そのため、災害の種類、規模や被災地域、事態の進行状況によって多様化する利用者の意図に応じて、的確に調査することが難しいという課題があった。
そこでこの技術では、LLMによる言葉の意味解釈と画像分析による画像の類似性判定を活用することで、膨大な現場画像の中から、利用者の意図に合う画像に絞り込むことができる。
絞り込みには、フリーワード検索ができるほか、画像分析を活用し、利用者が探したい場面を画像で指定することにより、言葉では表現が難しい場面でも類似した画像に絞り込むことが可能だ。
被災場所が分からない現場画像については、街の広い範囲をカバーする上空画像や地図データと照合することで、現場画像の場所を番地レベルの正確さで推定し、地図上に表示することができる。
また、災害時などの緊急時に提供される現場画像には、必ずしも位置情報が付与されておらず、被災場所の特定が難しい場合があるが、NECが開発してきた衛星画像や航空写真などの上空画像を活用して場所を推定する技術と、地図データの地理情報を合わせて活用することで、災害時の現場画像でも高精度に場所を推定することが可能になった。
現場画像から道路、建物、信号機などの領域を自動抽出し、地図のレイアウト情報(道路や建物などの形状や配置)と照合することで場所を推定する。
これにより、地震の際は建物よりも損壊リスクの低い道路の情報を積極的に用い、水害の際は道路よりも冠水リスクの低い建物の情報を用いて照合することで、建物の一部倒壊や道路の一部浸水がある現場画像でも高精度に撮影場所を推定することができる。
NECは今後、災害対応を担う関係省庁や自治体などにこの技術を提供し、2025年度中に実用化することを目指すとしている。
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