踏切事故は、鉄道運転事故の4割を占め、2021年度は217件発生しており、国土交通省の情報では、踏切事故のうち42.9%が歩行者の渡り遅れに起因するものとなっている。
踏切事故を防ぐためには、線路内の滞留をセンサで検知する踏切支障検知装置が設置されることが一般的で、自動車など大きな物体は高精度に検知できる一方、小さな物体の検知精度向上が課題なのだという。
こうした中、関東鉄道株式会社、株式会社コシダテック、株式会社ヤシマキザイ、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は、線路内に滞留する物体を大小問わずリアルタイムに検知する「踏切内AI滞留検知システム」を活用した踏切事故の未然防止に向けた実証検証を、2023年9月1日より開始する。
このシステムは、踏切付近に取り付けた市販のネットワークカメラの映像を、5Gネットワークで「docomo MEC」に伝送し、生成モデルの一種である「変分オートエンコーダ(VAE)」や、移動物体を検出する「背景差分技術」を活用してAIにより解析することで、線路内に滞留する物体を検知するものだ。物体を検知した場合、施設管理者へアラート通知する。
また、取得した映像をリアルタイムに「docomo MEC」へ伝送し、一定期間蓄積するため、遠隔地からの現場確認用カメラとしても活用することが可能だ。
実証検証の期間は2023年9月1日~2024年3月31日で、関東鉄道・常総線の海老原踏切道の茨城県守谷市と守谷駅~新守谷駅間において、自動車以外の小さな物体(車いす、電動カート、ベビーカー、手押し車および帯同者)の検出精度と実用性の検証が行われる。
今後4社は、実験により得られた結果を踏まえ、システムの有効性を確認するとともに、線路内に滞留する物体を検知した場合に接近する列車の運転士にアラート通知する機能など、システム改修を図るとしている。
その後、鉄道各社へのシステム導入に向けた提案を行い、システムを構成する技術を応用することで、線路内への鳥獣侵入、ホームからの転落、駅構内の異物などの検知を目指すのだという。
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