株式会社日建設計は株式会社デンソーウェーブと協働し、3D-LiDARを用いて人流をリアルタイムで計測するシステムのプロトタイプを開発した。
近年、自動運転や交通量調査に応用されている3D-LiDARを用いた人流計測技術は、カメラやビーコンに比べて位置検出の正確性が高く、個人情報を取得せずにリアルタイムで計測できるなどのメリットがある。
一方、大量の点群データによって人の形状を認識するためには莫大な計算資源が必要であり、広い空間内で不特定多数の行動を把握するには、操作や処理が重いという課題があった。
そこで日建設計とデンソーウェーブは、現時刻と前時刻の点群の差分によって移動体を抽出するという解析方法に「人は突然出現・消失しない」という前提に基づく、ポスト処理アルゴリズムを組み込んだ。
これにより、移動体が停止しても見失わず、人の移動と滞在を少ない計算資源でも把握できる3D-LiDARのシステムを実現した。
どの空間を、いつ、どの程度の人が利用しているのかが分かることで、空間の利用実態に応じた改修計画、人流と連動した設備の省エネ制御やロボット運行経路の補正、リアルタイムの人流把握による災害時の避難誘導や、イベント時の混雑検知などに役立てることができる。
なお、日建設計の東京オフィスのパイロットフロアにてこのシステムの本格運用を開始している。
また、適用事例として、2013年に完成した東京駅八重洲口開発・グランルーフでは、パブリックスペース活性化に向けた約234mのペデストリアンデッキのリニューアル工事に際して、新たな植栽と什器が先行的に設置された箇所において、このシステムによる効果検証を行った。
システムが実測したデータの分析結果によれば、滞在人数が平日で約12%、休日で約84%増加しており、これまでの通行空間が滞在空間に転用されていることが確認され、この評価が、長大なデッキ全域への工事実施という投資判断につながったのだという。

今後日建設計は、システムを空間の課題抽出や改善提案に活用するとともに、人流と連動した設備の省エネ制御へ向け、2024年に東京オフィスにおいて、滞在人数に応じた照明制御の検証を開始する予定だ。
また、将来的には、国土交通省が主導する3次元の都市モデル「Plateau」や、建物モデル「BIM」と統合することも想定されている。都市や建物の静的なデータにシステムで取得した時系列の動的なデータが付加されることで、4次元的なデジタルツインの構築が可能になるのだという。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。