鋼構造のインフラ設備が多く設置されている中、その老朽化を進行させる主因は鋼材の腐食だ。時が経つにつれ、設備の耐久性能や耐荷性能は徐々に低下し、破損や崩壊につながる可能性があるため、設備管理者は劣化状態を確認し、残存する耐久・耐荷性能を適切に診断することが重要だ。
耐久・耐荷性能の評価には鋼材の厚さが必要だが、目視による点検では腐食の深さは把握できず、現行の点検方法では耐久・耐荷性能を正確に評価することは難しい。
超音波を用いた鋼材の厚さ計測方法もあるが、作業コストが高いため現実的には実施できないほか、大型構造物の点検では、足場設置等のコストも発生するという課題がある。
こうした中、日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、デジタルカメラを用いてインフラ設備を撮影した画像から、自動的に鋼材の腐食を検出し、腐食による鋼材断面の欠損量といった腐食の深さを推定する画像認識技術を確立した。
この技術は、NTTが保有している通信インフラ設備である鋼製の管路設備(鋼管)を用いて構築されている。

腐食の検出では、鋼材断面の欠損を伴わない軽微な腐食が発生した領域、断面欠損を伴う腐食が発生した領域、腐食が発生していない健全な領域に区別して判定する。これにより、鋼材断面の欠損を伴う監視性の高い腐食の発生領域を定量的に把握できる。
鋼材断面の欠損量推定は、NTT独自のデータベースを用いた機械学習モデルの構築により実現している。腐食の広がり、色、錆こぶの大きさ等といった腐食の進行により変化する様々な外観特徴の中から、鋼材断面の欠損量と関連性の高い特徴を明らかにしている。
この特徴に基づき、様々な進行度合いの腐食画像をグループ化し、各グループで十分かつ均等になるように腐食の画像とその画像における断面欠損の計測値を用意した。
腐食の検出では、断面欠損を伴う腐食が発生した領域を検出する。その後、腐食の進行度合いを解析することで管路断面の欠損量を推定する。
最後に、通信用の鋼管は健全な状態で厚さ4.20mmであるため、断面の欠損量を引くことによって腐食箇所における残存する鋼材厚さは2.95mmと算出できる。
この技術を活用した検証では、現場に設置されていた鋼管を用いてパイプカメラで鋼管内面の撮影を行い、撮影画像から腐食による鋼材断面の欠損量を推定した。
また、同技術で推定を行った腐食30箇所で鋼管を断面方向に切断し、電子顕微鏡を用いて断面の欠損量を測定した。

その結果、相関係数は0.803であり、高い相関が確認された。推定値の実測値に対する平均誤差は誤差0.20mm、ばらつきは0.12mmであった。これらの結果より、鋼材断面の欠損量は誤差±0.44mmの精度で推定できることが示された。

今後この技術は、2024年度にNTTグループ会社での実用化を予定している。また、橋梁、鉄塔、ガードレール等といった様々なインフラ設備への技術拡大を進めていく計画だ。
なおこの技術は、2024年5月16日~17日に開催される「つくばフォーラム2024」で紹介される予定だ。
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