地震による地盤変動が生じると、土地の地盤は沈下や液状化によって弱体化していく。そして、地盤が構造物の重量を支えきれなくなることで、倒壊を引き起こすリスクが発生する。
こうした地震の影響を受けやすい土地の調査は、これまで特定の地域における限定的なサンプリングにとどまっており、広範囲の場所で土壌の状態を評価することは困難とされてきた。
こうした中、芝浦工業大学工学部・稲積真哉教授の地盤工学研究室らの研究チームは、土地の地盤強度を予測し、地震による地盤沈下と液状化のリアルタイム被害予測システムを開発した。
今回の研究では、東京都世田谷区内433地点の地盤データを収集し、緯経度や標高などの地理的データと統合することで、広範囲における支持層の分布を示す3次元マップの作成に成功した。
具体的には、地盤の強度を調べる「標準貫入試験」と、土の抵抗力を測定する「ミニラムサウンディング試験」という、土の密度と基礎の必要条件を評価する2つの方法を用いて、東京都世田谷区内の433地点の地盤データを収集した。
これらのデータに、クリギング法と呼ばれる統計手法を適用し、緯経度などの地理的座標に基づいて支持層の厚さと深度を予測した。
これにより、世田谷区の広範囲における支持層の分布を示す3次元マップを作成することに成功した。さらに、予測精度を向上させるため、モデルを並列に組み合わせて多数決をとる「バギング法」を採用し、地盤データに加えて標高などの地理的データを含めた。
土層の支持力と厚さは、地盤が建物やその他の重量構造物を支える能力があるかを示す指標の一つとなる。
今回作成された支持力特性を示す3次元マップは、構造物が安定した基礎の上に建設されているかどうかを判断でき、地盤変動が発生した際の倒壊リスクを最小限に抑えることができる。
さらに同モデルは、地中の水分や地盤の動きなどのパラメータを監視するセンサから得られるリアルタイムデータと統合することが可能だ。
これにより、土壌状態の変化を継続的に監視することが可能となり、土壌の不安定性など健全性を損なう潜在的リスクを特定し、開発用地やインフラ、公共施設の設計・配置を最適化できるとのことだ。
研究チームは、「この研究は、国や自治体が新たな都市計画を考える際や、建設業者が事前のリスク評価を行う際に役立てられ、将来的には、個人が携帯電話等でリアルタイムに地理データや警報を確認できるシステムへの活用にも期待される。」としている。
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