光ファイバセンシングは、通信用光ファイバをセンサとして活用することができる技術で、工事振動の検知、道路除雪判断の支援、通信設備保守運用の効率化などに関する実証実験や技術導入が進んでいる。
この光ファイバセンシングをIOWN APN(オールフォトニクス・ネットワーク)と組み合わせることで、大量データの高速転送と高度なデータ解析が可能となり、センシングデータの活用を推進すると考えられている。
また、IOWN APNを構成するAPN-Gateway(※以下、APN-G)の光パス選択機能を利用することで、一つの光ファイバセンシング装置でAPN-Gに接続された既設の複数の通信用光ファイバの測定が可能だ。
※APN-G:IOWN APNを構成する装置のひとつで、波長の割り当て制御や集線、光パス選択を行う機能などがある。
今回、日本電信電話株式会社(以下、NTT)、東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)、西日本電信電話株式会社(以下、NTT西日本)、日本電気株式会社(以下、NEC)は共同で、IOWN APNに光ファイバセンシング機能を付与する接続構成を考案した。
光ファイバセンシングは、光の往復伝搬を利用して測定するため、IOWN APNの光パス上に配置される一方向にしか光を通さないデバイス(光アンプ等)を回避する構成で、光ファイバセンシング装置を接続する必要がある。
そのため、方向性結合デバイス(光サーキュレータ)を用いて、APN-Gの一方向にしか光を通さないデバイス(光アンプ)を回避して、往復したセンシング光を取り出すことが可能なAPN-Gと光ファイバセンシング装置の接続構成を考案・構築した。
これにより、通信光ファイバケーブルや地下管路などには何も手を加えず測定が可能であるため、既存の設備を有効活用して、広域エリアからセンシングデータの取得が可能となる。
また、高速道路などの長い直進道路とは異なり、交差点などが多く存在する一般道の短い直進道路でも速度・台数を検出できるよう解析を実施した。
そして、この新構成を既設の通信用光ファイバに適用することで、面的なエリアの交通傾向の把握や交通状況のリアルタイム可視化、トレンド分析が可能となることを実証した。
今回実施された実験では、5台の振動センシング装置をAPN-Gに接続し、大阪市内の既設の通信用光ファイバケーブル5ルート(延べ37km、8km四方範囲に配線)に対して、交通振動を面的に同時測定し、この交通振動を車速解析アルゴリズムで解析した。
その結果、一般道の通行車両の平均車速、道路の交通量とその時間変化を、200mメッシュの精細な粒度でリアルタイムに可視化することができた。(トップ画)
また、車両の速度と台数の解析結果は、5地点で現地測定した正解データと一致する傾向を示すことが確認された。
一般道の交通流計では、主要幹線のみに数km間隔で設置されるため、膨大な数のセンサの恒久的な設置・運用が必要となりるが、APN-Gと連携した光ファイバセンシングでは、都市の隅々まで張り巡らされた光ファイバルート上の任意地点をモニタリングできるため、広域から収集する交通情報を活用した渋滞検知・予測や、都市交通計画への適用などの活用が期待されている。
今後は、各社と連携しながら、IOWN APNでの光ファイバセンシングの市場展開を図り、光ファイバがある任意の地点をセンシングでき、恒久的なデバイスの屋外設置・構築が不要な、都市モニタリングの実現を目指すとしている。
また、インフラ監視、防災などへの活用や都市計画における自然を取り入れたインフラデザインの実現など、都市モニタリングを通じたさまざまな応用展開も見据えているとのことだ。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。