ドバイ
「世界の最も幸せな都市」を目指しているドバイ市のSmart Dubai Office(スマートドバイオフィス、ドバイでスマートシティー・プロジェクトを担当している組織)は5月15日にすべての政府サービスにアクセスできるワン ストップショップ「Dubai Now」プラットホームの運用を開始した。
現在、「Dubai Now」は24政府省庁や民間企業の55種類のサービスを提供している。
セキュリティと司法、交通、支払いと請求書、ビザや在住、運転、健康、ビジネスや雇用、教育、住宅、イスラムなど、11種類のサービスがある。
ドバイのスマートシティーは200イニシアティブ、345スマートサービスがあり、それらは8つの政府機関や2つのスマート地区によって実施されている。「Dubai Now」プラットホームの開始をきっかけに、Smart Dubai Officeはこれからスマートシティー・プロジェクトによってなし遂げられた成果を計測し、国連とITU(国際電気通信連合)と協力しながら、グローバル・スマートシティ指数の開発を目指している。
ドバイ政府が100%所有している「Dubai Silicon Oasis Authority」というフリーゾーンは6つのパートナー組織と「Dubai Smart City Accelerator」プログラムを開始し、3年間にわたって参加するスタートアップに支援を与え、新しいスマートシティー開発をサポートする。
市場調査会社IDCは、アジアパシフィック地域(日本を除き)でSmart City Asia Pacific Awards (SCAPA)を開催しており、6か月間で14分野でのベストスマートシティープロジェクトを選定している。
このようなコンテストはスマートシティーの認知度を高めて、さらなる技術普及に繋がるため、大事な役割を果たしている。
今後のスマートシティに向けて
都市サービス、ベンダーや設備に使われている規格は複数であり、将来にシステム間の通信に問題を防ぐため、スマートシティー・プロジェクトのデザイン段階から相互運用性対策を重視すべきだ。
また、センサを簡単に取り換える、あるいはセンサのプログラム変更が簡単にできるような仕組みが必須となる。さらに、センサ数よりセンサの精度も大事である。
都市政府は、スマートシティー・プロジェクトによる効率化を求められているが、市民は、その持続可能性や都市強靭性に注目している。
持続可能な都市には再生可能なエネルギーやスマートメーター・スマートグリッドが不可欠である。
スマートメーターの利用によって、消費者は自分が使っている資源量を確認・管理が出来ることでエネルギー問題の緩和が可能になる。スマートシティプロジェクトの普及に伴って市内でグリーン技術採用の重要さが注目されてきた。
さらに、快適なスマートシティの実現にとって交通問題解決は大事であり、そこで自動運転車やシェアリング・エコノミー(共有型経済)が大きい役割を果たすだろう。
このような問題を解決するソリューションは少しづつ登場している。ボッシュがスマートシティ用の空気質管理システムを開発し、それを利用する市の役員が汚染に素早く対応できるようになった。Bosch Air Quality Micro Climate Monitoring System (MCMS)と呼ばれ、Intelの技術上で構築され、センサやソフトウェアを使い、空気質を測定している。
MCMSは米国環境保護局(EPA)が管理している187種類の汚染物質を測定する他、温度、湿度、音量や気圧を追跡する。MCMSは統合されたデータを分析し、交通量や工場などの廃棄物量をコントロールによって、状況を緩和することができる。
日常都市生活で市民がリスクを検出し、そのリスク対策をスマートシティソリューションで軽減・解決できる。市民が積極的に都市の変化に影響を与えられ、スマートシティやIoTによって市民と政府の新しい交流が生まれているともいえる。
さらに、スマートシティーに必要なデータのオープン化は政府活動をも透明にするといえるのだ。
シンガポールの取り組み
シンガポールは2014年から市民生活の改善、新しい経済機会や緊密なコミュニティ設立の目的でSmart Nationイニシアティブを展開しており、幅広いプロジェクトに取り組んでいる。
このイニシアティブの展開当たって、大事なメッセージは「Smart Nationは政府による築くものではなく、国民一人一人、企業や当局の協力によって作られるものである」という。
このイニシアティブの実行進歩は専用ポータルで確認できるため、国民の理解をもらいやすいのだ。
その背景で、シンガポールの南洋理工大学とデンマーク企業のコンソーシアムが提携し、「Smart City World Labs」プロジェクトを展開し、スマートシティへの包括的なアプローチ、持続可能な成長や開発によって両国で先進的なスマートシティの設立とその知識を世界に発信することを目指している。
今回、シンガポールがグリーンイノベーションのテストベッドになり、水やエネルギー節約技術を始め、グリーン・ビルディング・システムや電気自動車などが活用される予定だ。
また、STエレクトロニクスはシンガポールの年次展示会CommunicAsia 2017にて包括的なスマートシティサービスを紹介した。
その中は様々なIoTソリューションを統合し、データ交換や分析を促すSense & eXchange (WISX IoT) プラットホームを始め、クラウドで稼働するSmart Car Park Platform(スマート駐車プラットホーム)、 e取引用の二要素認証プラットホームDigiSAFE Authentication Server (DAS)の他、対ドローンシステムSkyArcher、Robotic Sentry、 DigiSAFE Data Diodeと PhoneCrypt という公安ソリューション・セキュリティーツールなどを公開し、これからは国内外で利用されていく。
最後に、数多くのシステムやステークホルダーを統合する、市民の個人情報を扱うスマートシティにとってセキュリティ対策がなくてならないものである。トレンドマイクロ株式会社は5月に公開した「Securing Smart cities」レポートにてスマートシティー用の10ステップ・セキュリティ・チェック・リストを紹介した。
デザイン・構築段階
1フォールトトレラントシステムを構築する
2 個人情報の保護対策を考慮しデータ処理を行う
3通信チャネルの暗号化、認証や規制化を実施
起動直前
4ソフトウェアアップデートの一貫性と安全性を確保
5ベンダーやサービスプロバイダーとの契約を結ぶ際、セキュリティを最優先にすること
6品質検査と侵入テストを必ず実施すること
運用・ライフサイクル中
7常に手動オーバーライドができるシステムを構築する
8基本サービスの持続性を確保
9スマートインフラストラクチャー・ライフサイクル計画を作成
10都市のCERT・CSIRT(computer security incident response team、コンピューターセキュリティ事件対応チーム)を構成するという。
スマートシティー・プロジェクトを成功させるに必要な技術、仕組みや対策がだんだん明らかになってきている。他の都市の事例から見習って、住んでいる都市の特徴や解決したい問題をはっきり把握し、新しいプロジェクトを始める都市が増えることを期待している。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。