スマート物流を実現するための3つの視点

上の図は、内閣府政策統括官が考案した3つの研究開発項目で、目指すべきスマート物流サービスにおいて、それぞれの項目がどの部分に対するアプローチなのかを表したものである。

  • A)物流・商流データプラットフォームの開発
  • B)「モノの動き」の見える化技術の確立
  • C)「商品情報」の見える化技術の確立

A) 物流・商流データプラットフォームの開発

物流・商流に関連するサプライチェーン全体のロジスティクスにかかわる、「モノ」「情報」「お金」の流れを標準化し、収集、活用可能な形に情報化する。

これらの情報を一元的に蓄積することでサプライチェーンの可視化や、関連事業者への有効な情報を提供することができる。さらに、情報の分析や加工による新たな価値を創出し提供していくことも可能となる。

これらの情報を管理運用する基盤となる「物流・商流データプラットフォーム」と、現場物流、商流にかかわる情報の効果的な連携にから、サプライチェーンにおけるステークホルダ間の事業協調による「製・配販活動全体」の効率化と生産性向上、ロスコストの低減を実現するのだ。

また、参加者の拡大により、このプラットフォームは、スマート物流サービスの創造といった、単一企業では成しえない協調型の効果創出を目指す。

B) 「モノの動き」の見える化技術の確立

2-6「モノの動き」の見える化の全体概念図

物流・商流データプラットフォームに乗せるための「モノの動き」の情報のうち、既存技術では見える化が不十分な情報を、見える化するための技術開発を行う必要がある。

「モノの動き」の見える化とは、狭い意味では「適切な時間間隔で荷物の位置を知ること」である。

しかし広い意味では、見える化の結果として得られる情報を活用して「モノの動き」を「効率化」したり、「計画化」することにある。

「効率化」というのは、「同一量の輸配送資源(例えばトラック)」でより多くの荷物を運び、動態の把握により積み替え時間などを短縮することで「一つの荷物の輸配送時間を短縮する」、また、積み替え場所などを把握することにより「不要な輸送を削減する」といったことを意味するのだ。

また、「計画化」とは、「荷物の到着時刻を正確に予測する」「特定の日時の荷物量を予測する」「損傷荷物に対する対策を早期に計画する」ことなどを意味する。

荷物を運ぶトラックや船などの輸送手段により商品や製品は倉庫や工場から集荷され、幹線輸送、物流センターでの中継を経て納品先に配送される。

商品や製品といった、運ばれる荷物の動きを把握するためには、集荷、幹線輸送、配送などの輸配送のプロセスで個々の荷物が「どのトラックに積まれ」「どこに位置するのか」を知る必要がある。

また、特定の荷物が中継される物流センターにいつ到着し、どの方面に仕分けされ、どのトラックに積まれたかなども知る必要がある。

2-6「モノの動き」の見える化の全体概念図_2

さらに、コンテナを含む荷物の損傷情報を、荷物の国内における発出元の一つである港湾や荷物等の輸送拠点である物流センター等において取得する必要がある。

このような位置情報や品質情報の取得は既存技術で実現されている部分もあるが、より正確、より安価に、また、より広いプロセスで連続的に取得するためには、位置情報・品質情報取得技術、データ連携技術 などで今まで以上の進歩が重要だ。

また、効率化、計画化された輸配送の実現のためには、積載効率の向上、トラックやドライバーなどの輸配送資源の稼働率の向上、物流センターでの荷積み・荷下ろしなどの荷役作業の自動化・効率化を高いレベルで提供しなければならない。

C) 「商品情報」の見える化技術の確立

物流・流通の対象物となる「モノ」自身の情報を知ることで「商品情報の見える化」を目指す。

この情報がサプライチェーンで標準化・共有化されることにより、物流・商流プロセスで発生する様々なイベント(生産・保管・出荷・輸送・入荷・陳列・販売・消費等)をその「モノ」自身の情報をキーとして記録していくことが可能となる。

その結果、モノの動きの見える化で可視化される「動き」の情報と「商品情報」が連携されることで、文字通りサプライチェーンに流れる全ての「モノ」とそのステータスを「可視化」することができるようになる。

ここでいう「商品情報」とは、「商品名」だけでなく、「個品単位で識別可能なシリアル番号」に紐づく「賞味期限情報」や「製造場所情報」といった詳細情報も含んだものを想定している。

データのさらなる活用

2-5スマート物流サービスのワーキンググループ

こうして

  • 物流・商流データプラットフォームの開発
  • 「モノの動き」の見える化技術の確立
  • 「商品情報」の見える化技術の確立

の3つの研究開発を連動させると上の図のようになる。

さらに、この連動させたデータを蓄積していくことができれば、戦略コーディネータにより、新たな社会実装計画実行のためのデータとして利用することができる。
(内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) スマート物流サービス 研究開発計画より。IoTNEWSで内容を加筆・編集)

INSIGHT

情報のプラットフォーム、移動と商品の見える化により、必要なリソースを効率的に稼働させるスマート物流は確立される。

注意点としては担い手となる作業員、ドライバーの手を煩わせないことだ。

データの管理自体は作業員達の業務ではない為、導入直後に現場から拒絶されることがしばしば起こる。

彼らの普段業務の中でこれらデータの見える化ができる仕組みを引くことが重要だ。

このサイトの読者であれば製造分野でそのような仕組みを構築したことがあると思われる為、是非、トライしてみてほしい。
(IoTNEWSロジスティック領域エバンジェリスト 北山)

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