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物流センターに最適な管理システムの作り方 ーフレームワークス秋葉氏インタビュー6

「ロジスティクス」は製造業と小売業をつなぎ、産業に必要不可欠な業種だ。ただ、ロジスティクスと一言で言っても範囲が膨大なため、簡単に語るには難しい側面がある。

そこで今回、ロジスティクス業界について、長年現場で支援を行ってきた、フレームワークス 会長の秋葉淳一氏に「ロジスティクスとデジタル」をテーマに現状を語ってもらった。第6回は「物流センターの管理システム」について聞いた。

品物は違っているが共通する課題

IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉): 「今どき、データを見ないと商売損をするよ」という視点がありますよね。そして、データを見たときに問題が顕在化される。さらに、その問題について、実はどこかにいろいろと解決策を考える人たちがいるわけです。我々の使命感としては、このことをメッセージとして伝えるべきだと思っています。

フレームワークス 秋葉淳一氏(以下、秋葉): それは、「やっている業界がちょっと離れていると思っているかもしれないけれど、業界内でもやっている企業はあるよ」ということですね。

元々、業界で切れているではないですか。取り扱ってる商品で分かれている業界もあるし、サプライチェーンの川上から川下でも分かれている。きれいなマスかどうかは別として、すごく分かれています。

ただ、「荷物を取り扱う」という見方をしたときには、「実は同じようなオペレーションでいいよね」ということが、当たり前のことですけれどすごくあります。だけど、分かれているからその情報自体も共有されていない。

この間も、ある化成品を扱う会社のコンサルティングをする中で、化成品ではプラスチックの元みたいなビーズのようなものがありますよね。あれは、我々が、ふだん使っている段ボールには入ってはいません。「ペーパーバック」といわれる、セメントが入っているような紙か、「フレキシブルコンテナ(フレコン)」という大きな袋に入れている。

これらは、形が崩れるのでパレットに載せようがない。だから、手積み・手おろしで人がやっている。構内ではフォークリフトで動かしてはいるけれど、トラックに積むときになったら、一生懸命、手で作業して綺麗に積み込んでいます。化学製品なのにです。

同じような話が、米を扱ってるところでも起きています。全く違う業界です。でも、どちらも同じ問題なのです。化成品は、まだ軽いからよいですが、米は重たいから、本当にとんでもない話です。確かに、それぞれを違うところもあるし、業界も違うのだけれど「一緒に勉強や技術開発をしないの?」と思うわけです。

小泉: そうなると、こちら側で、まとめてあげなければいけない気がします。「お宅とお宅は実はお友達だよ」といった話を業界の垣根を取ってあげる。

それには「まず、お宅は何業界ですか?」と聞いてあげればいい。そうすれば、例えば、米を扱っているとしたら、米を扱っている人向けのメニューがいくつか出てきて、それを知ってもらうと、「そんなしまい方があるんだ」「そんな運び方があるんだ」とわかるようになると思うのです。

秋葉: 先ほどの話した「ペーパーバック」や「フレコン」というキーワードが起点でオペレーションの話題になれば、こちらも同じ梱包資材を使用していて議論が進むこともあるでしょう。ただ、毎日、毎日そのオペレーションしか見ていない視野が狭い人だったり、食品は食品だけでしか運ばないといけないと思っている人だったりすると議論は進まない。

小泉: 新卒で入社して、ずっと同じ現場を見ていたら、世界がそれしかないと思いますよね。ほかの物流センターを見に行くこともなさそうですしね。

秋葉: 最近でこそ、見せてくれる物流センターが出てきていますが、以前は見せてくれませんでした。ただ、我々は仕事柄、物流センターに行かないと業務ができない。

小泉: フレームワークスで業務システムを組まなければいけないとします。そうしたら、一番初めに、その現場を見に行くわけですよね。

秋葉: 現場は見に行きます。ただ、その前に「どういう商品を扱っているのか」ということがあります。それは「配送形態としてどうなのか」や「床面積がどれぐらいで、どういうレイアウトでやりますか」といった話をヒアリングすると、大体イメージがわかります。また、「1日当たり、どれぐらい入出荷がありますか」であるとか、「その入荷のときの情報はどのようなものがありますか」といったことを聞くとわかります。

我々は「整理しましょう」と言って、このような図で整理をします。「マテリアルフロー」という言い方をしています。物流センターでも店でもよいのですが、「物が入ってくる流れ」と「物が出ていく流れ」をきちんと書くことと、言葉の定義をきちんとします。

物流センターに最適な管理システムの作り方 ーフレームワークス秋葉氏インタビュー6
マテリアルフローの例(出典:ダイワロジテック)

例えば、「入荷」という言葉を使ったとしても、会社によって、また同じ会社でも物流センターによって、言ってる意味が違っていたりします。「入荷」と普通に言っても、新しい商品が入ってくる入荷もあるし、返品されてくる入荷もあるし、別の物流センターから横持ちで入ってくる荷物もある。

それを「入荷」という言葉だけで会話をすると、ずれる可能性があります。「入荷」と言っているけども、それはどういう商品の入荷なのかを定義して線を入れつつ、言葉をきちんと決めていく。例えば「返品入荷って言いましょう」といったことです。出荷も同じです。

これでモノの流れを整理します。次に、この中のモノの流れを整理します。あとは量の話です。それがわかると、最終的にどうしたらよいのかイメージが湧いてきます。我々はロジスティクスに関わるシステムソリューションを専業にしているので、誰が登場してもイメージが湧きます。一般のSIerは、いろいろな仕事をするので、「言葉を整理しましょう」という話が、そもそもできないのです。

フレームワークスが行うシステムの組み上げ方

小泉: これはおそらく、「Warehouse Management(倉庫管理)」の領域と思うのですが、「Warehouse Management」の業務システムには、パッケージ化されているものもあります。そういうものは、割とこれの典型的なパターンですよね。

秋葉: 我々もパッケージを保有していますが、それは典型的なパターンを整理している状態です。我が社では、シナリオを整理して、、それをベースとしたパッケージがあって、シナリオの組合せに合わせたモジュールも用意をする。そして、そのときには「こういう画面、こういう帳票、こういうハンディー端末の仕組みでやりますよね」といった感じで、実際に動くものを見てもらいながら、要件を整理していきます。

先ほどお話をしたような情報を聞くと、イメージが湧く。「このシナリオがフィットするんじゃないか」と考えて、それに基づいて用意されたシナリオパターンの画面などを用いて、お客さんと会話をするわけです。

お客さんは自分たちのやってきたことしか知らない。そして「いや、今の仕組みはこうだから」とか「今こうやっているから」と言われます。そこで、例えば、入力をしているデータについて「いつ使いますか?」「何のために使いますか?」と聞くのですが、答えられないことも多くあります。

また、帳票の話をしていると「今、エクセルで作っている表にはこういう項目があって、こういう情報が出ていたんだ」と言われることもあり、「その情報は使っていますか?」と聞くと、「ん?」となったりします。ほかにも、画面レイアウトの話では、「見たい所はここら辺ではなくて、この辺に固めてほしいんだよね」と言われたりするわけです。

我々としては、そのような要望が出てくることはわかっているので、仕組み上は画面には全ての情報を並べられるようにしています。そして、その情報の中から表示したい情報と表示順をユーザー端末ごとに設定ができるようにしています。

それは、どういうことがベースとして必要かがわかっていることと、データ構造がきちんとしてるからこそできるわけです。どういうデータを持っていることに意味があるかがわかっているからこそできるわけです。

小泉: なるほど。業務フローの入り口から出口までの全体を押さえて、「ここできっとこんなデータが入ってくるから、出荷するときにはこういうデータがいいよね」ということまでをわかった上で、マネジメントシステムが組まれているわけですね。

秋葉: そのほかにも、ASN(Advanced Shipping Notice)というのですが、入荷予定のことです。「入荷予定がもらえるのなら、わざわざここでデータ入力しなくても済みます。もらえないから、こんな作業が必要なんですよ」といったことも、お客さんと話せるわけです。

小泉: そうやって主導線がきちんと決まってくると、途中で起きてくるイレギュラーに対して「小さいサブシステムを作ろうか」「それを仕組みでやりますか」「人間がやりますか」「自動化機器入れますか」ということが始まるわけですね。

秋葉: 「イレギュラー」といいながら、毎日起こっているのであれば、それは通常です。また「いや、すごく大変なんだよ、こういうことが起こったときは」とお客さんが話をされることもあります。そこで「それは年に何回起こるのですか?」と聞くと「2年に1回ぐらい」という答えであったりもします。それならば「だったら人間がやるよ」となりますよね。

こうしたことが整理できるかどうかなのです。だけど、先ほど話したように、自分たちの目の前でやっていることが全てなので、面倒くさいけれど、そうせざるを得ないだろうという話になってしまうわけです。(第7回に続く)

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