シノプスが需要予測を活用し物流効率向上を実証、300台のトラック削減と発注79%削減を実現

物流業界は、人口減少による労働力不足の深刻化や、トラックドライバーの時間外労働が960時間に規制される「2024年問題」など、多くの課題に直面している。

これらの問題の解決には、物流業者だけではなく、消費財のサプライチェーンの起点となる小売業との連携、特に小売業の在庫管理と発注業務の最適化が必要だ。

こうした中、株式会社シノプスは、経済産業省が有限責任監査法人トーマツに委託した事業の実証実験において、シノプスの「sinops-CLOUD」の需要予測を活用することで、店舗配送時のトラック年間約300台削減、小売業の販促時の追加発注を79%削減などの効果を確認したという。

この実証実験では、コープさっぽろの店舗および物流センターにて、新商品と販促商品の小売りから仕入先への発注確定日を前倒しする「納品リードタイム(以下、納品LT)長期化」を実施した。

小売業において、通常の商品は需要予測ツールが広く利用されているが、新商品や販促商品においては販売予測がむずかしく、それが過剰在庫や不足分の追加発注といった問題を引き起こしている。

そこで実験では、従来3~7日程度であった納品LTを2週間程度まで長期化することで、卸売業の販促期間中の追加発注の対応に向けた在庫調整業務の負荷軽減、物流センターの過剰在庫や欠品の防止、物流の効率化を目指した。

具体的には、需要予測データを活用して、従来の追加発注分も考慮した上で、初回の発注量を2週間程度まで延長した場合、販促期間中の発注回数や在庫数にどのような影響を及ぼすかシミュレーションを実施した。

シミュレーションと特定の販促期間に店舗での実績を比較した結果、店舗での実績と同程度の在庫日数を保ちながら、対象の販促商品61SKUの追加発注を79%削減、また過剰な追加発注を抑制したことで、対象商品のセンター在庫を42.9%削減可能、という効果が推計された。

また小売側でも、本部で各店舗に対して掲示している発注参考値の準備業務の所要時間が削減されるなどの効果が推計されている。

なお、この実証実験は現在も実施中であり、今後は実際に店舗で需要予測システムの提示する発注値を採用した場合の実績値も検証予定だ。

シノプスが需要予測を活用し物流効率向上を実証、300台のトラック削減と発注79%削減を実現
実証1:新商品・販促商品に係る発注適正化(リードタイムの延長等)

さらに、コープさっぽろの店舗および物流センターにて、仕入先から小売への配送量を曜日に限らず、一定にコントロールする「配送量の曜日平準化」の実証実験も実施した。

この実験では、店舗への配送量やトラック積載効率を考慮した需要予測を実施。需要予測に基づき店舗の発注量を調整することで、曜日による配送量のバラつきを平準化し、納品に関わる物流・店舗作業の負荷分散しつつ、トラック積載率を向上させることで、配送トラック台数削減などの効果を目指した。

その結果、配送量の平準化を実施しても、店舗の欠品率は増加せず、通常通り運営出来ることが分った。

またその際、店舗の陳列業務の工数も削減されるなどの効果も確認されている。平準化する際に、1度に配送するアイテム数の削減することで、トラックの計画的手配が可能になり、1地区1月あたりの配送トラックを64台から39台、年間にすると1地区あたり300台の配送トラックが削減できる見込みだ。

なお、この実証実験も現在実施中であり、他店舗・他カテゴリーでも納品量を平準化した場合の実績値を検証予定だ。

シノプスが需要予測を活用し物流効率向上を実証、300台のトラック削減と発注79%削減を実現
実証2:店舗配送量の曜日平準化

加えて、ウオロクの店舗および物流センターにて、気象災害時の物流圧迫を緩和する「気象予報情報の活用によるレジリエンス向上」の実証実験を行った。

この実験では、気象情報などを加味した需要予測データを活用することで、大雪予報発令前に即席めんやレトルトカレー、カイロなどといった大雪時の売れ筋カテゴリの発注値を自動で引き上げ、災害発生中は発注値に上限を設定することで、過剰な発注を抑制する。

その結果、実証対象店舗では、対象外店舗よりも大雪時の欠品数が19%抑制され、売上も増加した。

また、大雪による災害発生中には発注値に上限(平常時の1.3倍)を設定する机上検証を実施。災害発生中の物流が混乱する状況下でも、店舗の欠品を抑制しながらも、物流センターの作業人時を13%に抑制可能であることが推計された。

なお、この実証実験も現在実施中であり、発注値の上限設定は、実際に大雪によって高速道路が通行止めとなるような物流の混乱が起きる可能性のあるタイミングに再度実施予定だ。

シノプスが需要予測を活用し物流効率向上を実証、300台のトラック削減と発注79%削減を実現
実証3:気象予報情報の活用によるレジリエンス向上の実証

現在、机上検証中である検証内容は、今後実店舗およびセンターにて実地検証、効果測定が行われる予定だ。

また、実証実験の途中経過は、2024年2月20日に経済産業省が開催する第2回北海道地域フィジカルインターネット懇談会内でトーマツから発表され、最終報告は2024年4月以降に経済産業省のホームページで公開される予定だ。

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