2024年4月より、「働き方改革関連法」の適用や「改善基準告示」の改正が行われ、ドライバーの拘束時間や運転時間などの規制が強化された。
今後、さらなる物流の効率化が求められる中、まずは、現在取り組まれている対応策や、そこから見えてくるさらなる課題といった、現状を把握することが重要だろう。そこでIoTNEWSでは、物流の効率化へ向けて取り組んでいる企業の取材を行っていく。
今回紹介するのは、メイン倉庫がシングルテナント型からマルチテナント型への移転をきっかけに、効率化に取り組むオリオンビール株式会社の事例だ。オリオンビール株式会社 SCM部物流管理課の服部氏にお話を伺った。(聞き手:IoTNEWS小泉耕二)
荷卸し場の減少で、迫られる効率化
IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉): まずは、御社の配送の流れについて教えてください。
オリオンビール 服部氏(以下、服部): 弊社の製品は、沖縄県北部のオリオンビール名護工場で製造され、沖縄県内の各販売代理店へ配送される製品は、沖縄本島中部にある弊社のメイン倉庫に移送、保管後、出荷されます。また、このメイン倉庫には、販促資材や仕入商品、回収した空樽なども入荷される拠点となっています。
これらを運ぶ運送事業者は、協力会社と他社の事業者含め約20社程度が関わっています。
小泉: どのような課題感から物流の効率化に取り組まれたのでしょうか。
服部: これまでは、メイン倉庫が自社所有かつ、シングルテナント型であったこともあり、各運送事業者は、予約なく到着したタイミングで入構していました。倉庫付近には待機場所や荷捌き場のスペースが十分にあったため、それでも順次荷捌きすることができていたのです。
しかし、このメイン倉庫は、2023年4月から複数企業が利用するマルチテナント型の倉庫に移転しました。
マルチテナント型の倉庫では、シングルテナント倉庫の時よりは荷捌き場が限られるため、入構時間を管理しなければ荷捌きができなくなるという課題を認識していました。
そこで、Hacobuのバース予約受付システム「MOVO Berth」を導入して、ドライバーに荷捌き場(バース)を予約した上で入構してもらうようにしました。
小泉: どのような成果が生まれたのでしょうか。
服部: 「MOVO Berth」をとおして、ドライバーや運送会社の配車担当者は荷物情報や入構日時などを入力し、予約することができます。
また、弊社も予約情報をもとに入構計画を確定し、倉庫担当者にも作業情報として共有することができるようになりました。
以前のメイン倉庫の時には、トラックが数台待っている「荷待ち」が発生していたため、焦りながら作業をせざるを得ない状況だったと思います。
この取り組みにより、ドライバーは予約時間に入構できるようになりました。また、倉庫の荷卸し担当者も、荷待ちが減少し、精神的な負担も軽減したのではないかと思っています。
ステークホルダーの協力を得るためツール導入の意義を伝える
小泉: 一方、これまでバース予約システムを活用していなかった複数の運送事業者に理解をしてもらい、ツールを活用してもらうことが一つのハードルだと思うのですが、これはどのように乗り越えられたのでしょうか。
服部: 運送事業者に対し、導入前の説明会を実施しました。予約システムを導入することでの弊社と運送業界全体へのメリットや意義を、弊社と取引のある運送事業者に伝えられたと思います。
その際、Hacobuの担当者にシステム自体の説明や導入支援をいただき、無事立ち上げることが出来ました。
導入当初は「予約システムの操作に慣れない」等の操作方法の問合せはありましたが、関係各社の皆さまが前向きに協力、実践してくださり、上手く運用ができるようになりました。
小泉: システムの説明だけでなく、物流全体にとっての意義を説明してもらえることで、運送事業者側も納得感を持って活用することができたのですね。
データから現状把握することでさらなる改善へつなげる
小泉: バース予約システムを導入したことで荷待ちが解消できたということですが、副次的な効果はありましたか。
服部: 現在、システムを導入して1年程が経ちましたが、データを見ることで現状が見えてきました。
これまでは、荷捌きにかかる正確な作業時間を把握していなかったため、荷受け作業に1時間の枠を取っており、一日の最大荷受け台数を16台に設定していました。
しかし、「MOVO Berth」で取得した実際の作業時間を見てみると、荷受けが15分〜20分程度で完了している場合もあることがわかりました。
これをもとに適切な時間枠設定ができれば、さらなる効率化に繋がると見込んでいます。
また、今後は庫内作業者の適切な配置につなげ、製品ピッキング業務等の効率化に着手していきたいと考えています。
4月から、ドライバーの時間外労働規制が適用されたということもありますので、物流効率を目指して、さまざまな提案をし、運送事業者と協調していきたいです。
小泉: 本日は貴重なお話をありがとうございました。
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