包括的な評価を行うことを目的に設立された組織IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)のシミュレーションでは、2050年時点で削減しきれないCO2排出量は、100億トンにのぼるとされている。
そのため、カーボンニュートラルを達成するためにはカーボンクレジットの活用が重要な手段の一つとなっている。
国土の7割を森林が占める日本には、自然活用によるカーボンクレジット創出の潜在能力があるとされているが、多くの森林が未整備のまま放置されており、活用が進んでいない状況なのだという。
こうした中、株式会社日立システムズは、衛星を活用したGHG(温室効果ガス)排出量の測定技術を持つEverImpactと連携して、森林のCO2吸収量を可視化し森林計画と組み合わせることで、カーボンクレジット創出量を算出する実証実験を実施した。
今回の実証実験では、石巻地区森林組合が管轄する森林のうち、植林や間伐等の施業が進んでいる数千haの森林を対象に、衛星から得られるデータから気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のシナリオを元にした分析により、過去20年分のCO2吸収量を可視化した。
さらに、可視化した情報と、森林計画を組み合わせることで、カーボンクレジット創出量の算出を行った。
また、この実証実験では、NPOや企業、団体など、民間が主導して発行されるカーボンクレジットである「ボランタリークレジット」市場の約70%のシェアをもつアメリカのNPO(非営利団体)であるVerraが認定する「ボランタリークレジットVCS(Verified Carbon Standard)」を採用している。
VCSは、世界中で多くのクレジットの創出・売買が行われているほか、衛星などを活用したリモートセンシング(観測)による測定が認められており、カーボンクレジットの創出量増加が見込まれている。
そして、この本実証実験を通じて、年間2.25万トンのCO2吸収量、最大2.6億円相当のカーボンクレジットの創出可能性が確認された。
さらに、可視化した情報は、今後の森林計画に生かすことで、CO2吸収量の向上を支援する。
日立システムズは、今回の実証実験で得たノウハウを活用することで、カーボンニュートラルへ向けたカーボンクレジット創出から取り引きまでの支援といった新サービスの提供を、2024年度中に開始する予定だ。
また、日本が認証しているカーボンクレジット制度であるJ-クレジット制度においても衛星活用が認められた際には、J-クレジット創出にも取り組む計画だとしている。
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