近年、製品単位のCO2排出量の算定・開示に対する関心が高まっており、特にソフトウェア製品のCO2排出量算定に関しては、開発者の削減努力が反映されにくいという課題があった。
そこで日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、経済産業省が公募した「令和5年度 GX促進に向けたカーボンフットプリントの製品別算定ルール策定支援事業」に2023年8月から参画し、ソフトウェア製品の算定ルールの検討を進めてきた。
そして今回NTTは、上記事業において、経済産業省の「カーボンフットプリント ガイドライン」に整合した算定ルールの一つとして、受託開発ソフトウェア製品のCO2排出量算定ルールを策定したと発表した。
この算定ルールは、受注から生産・納品までを対象とした、ソフトウェア開発段階のCO2排出量の算定に関するルールだ。
受託開発ソフトウェア製品は、製品固有の要求仕様に基づき製造されるため、開発時に発生するCO2排出は開発者の活動によるものが中心だ。そのため、CO2排出量算定における活動量の把握が有形な工業製品のような量産品に比べて容易ではない。
そこで今回策定された算定ルールのポイントは、「ソフトウェア開発特有の算定プロセス・排出源等の体系化」と、「ソフトウェア製造前の算定・比較への対応」の2点となっている。
「ソフトウェア開発特有の算定プロセス・排出源等の体系化」では、CO2排出観点での開発段階のライフサイクル分析を行い、算定対象のプロセス・排出源を定義した。
さらに、開発者が利用する機器・設備が消費した電力と開発対象である個々のソフトウェア製品との紐づけの方法を定めた。
これらによって、開発者の削減努力を反映した算定を可能にしている。
NTTは、「この算定ルールで定めた内容とその考え方は、適用対象を拡大する際の土台になる」としている。
また、「ソフトウェア製造前の算定・比較への対応」では、経済産業省の「カーボンフットプリント ガイドライン」で定められたCO2排出量算定における基礎要件に加えて、排出量を比較されることが想定される場合の要件を規定している。
特に、製品完成後に加え、グリーンな調達における入札時などの製造前にCO2排出量を算定・開示することを想定し、設計値を用いて算定したCO2排出量の比較を可能にした。

なお、この算定ルールには、NTTデータグループ、NTTアドバンステクノロジ株式会社、NTTテクノクロス株式会社、NTTコムウェア株式会社、株式会社クニエ、株式会社日立製作所、日本電気株式会社、富士通株式会社も協力しており、NTTは、2021年からソフトウェア開発時の消費電力計測実験を実施し、CO2排出量算定にあたっての算定範囲や必要なデータの収集方法などを調査。これらの知見を活かして算定方法の素案を提案し、参画企業との議論・合意形成を主導した形だ。
今後は、算定ルールを活用した実証実験やソフトウェア業界企業とのさらなる議論を通じて、ルールの実用性向上やグローバルなコンセンサスの形成を目指すとしている。
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