データセンターは、ICTサービスを支えるデジタルインフラとしての機能を担っており、情報通信技術の進展や生成AIの普及等によって、今後需要がさらに拡大すると言われている。
これに伴い、通信ネットワーク設備やデータセンターの消費電力量は増加傾向にある中で、メガクラウドベンダーはデータセンターのカーボンニュートラルを掲げており、その実現に向けた取り組みを進めている。
また、高性能・高発熱なサーバを効果的・効率的に冷却する仕組みが求められており、現在主流である空気で冷却する方式(空冷方式)に変わる新たな冷却方式として、冷却液をサーバに直接送り込み、コールドプレートで冷却する「液冷方式」サーバーが登場し、普及が始まっている。
こうした中、株式会社NTTファシリティーズは、データセンターの高発熱化への対応とカーボンニュートラルへの貢献を同時に実現するデータセンタープロジェクトを開始した。
このプロジェクトでは、全面的に液冷方式サーバを採用した次世代型データセンターを構想しており、2030年頃までの実現を目指すものだ。液冷方式の採用により、データセンター冷却用消費電力量を約50%削減することが可能と資産されている。
サーバを格納するデータホールは、液体を直接送り込むためのシステム「CDU」として機能する「LCMR(Liquid Cooling Machine Room)」と、空冷を担う「ACMR(Air Cooling Machine Room)」を分けて配置することによりセキュリティを担保するとともに、それぞれの設備を混在させないことにより、保守スペースとサーバ増設時の拡張性を確保している。

また、熱伝導率の高い銅管を用いた「プレクールコイルウォール」を、建物外周にラジエータ状に張り巡らせ、サーバの熱により温まった液冷サーバの冷却水を循環させることで、外気により自然冷却する。

さらに、周囲に水盤を取り入れることにより、水盤からの気化熱によって放熱を促進する。これにより、冷却に必要な設備消費電力量を低減し、冬季や中間期等の外気条件等によっては「プレクールコイルウォール」のみで冷却を完結させることも可能と試算されている。

加えて、サーバからの廃熱をデータセンター内オフィスの暖房や給湯用途、周辺地域への温水熱源として利用することで、地域全体の省エネルギーに貢献する計画だ。
液冷サーバの導入により、サーバは従来の8kW/ラック程度より、5倍ほどの40kW/ラック程度の高集積・高密度化をすると予測され、NTTファシリティーズではデータホールの面積は約1/3まで縮小されると試算している。
これにより、建物全体のボリュームも縮小化され、行政への確認・協議などが必要ではあるものの、立地、敷地の利用計画など、データセンター事業者の選択肢が増えるとしている。
今後は、技術的な検証や廃熱の利用方法の検討、さらなる省エネ性能向上の検討などを進めていく予定だ。
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