ダッソー・システムズは2019年6月21日Dassault Systèmes User Conference 2019を都内にて開催した。
このカンファレンスでは日々の業務課題に対する取り組み事例を中心に、3Dモデリング、シミュレーション、コラボレーション、それぞれの領域の業務課題解決の紹介として、様々な公演が行われた。
今回はその中の隈研吾建築都市設計事務所による「Generative Designによる建築設計の新たな可能性」という公演の紹介をしたい。

まず隈研吾建築都市設計事務所 設計室長 松長 知宏氏より、ダッソー・システムズの3D EXPERIENCEプラットフォームを使って設計された建築物を紹介された。

これはスコットランドのダンディーという街に造られた「V&D Dundee」という美術館だ。
この建物はダンディーの川沿いにあり、建物が川にせり出すようなデザインになっている。そのため、雨風の影響を受けやすく、耐久性のあるプレキャストコンクリートを使用している。
その際松長氏は、プレキャストコンクリートのパーツの配置や、どのように作るか、どのようにつけるのか、どのように図面に落とすか悩んでおり、ダッソーズ・システムズの3DEXPERIENCEプラットフォームによって強化されているCATIAというアプリケーションを使用して作成したという。
これは実際にCATIAを使ってデザインをしている画像だ。台形の断面図だが、背面がねじれており、同じパーツでも左右が異なっている。
パラメトリックデザインで街に寄り添うデザイン設計
またダッソー・システムズは、今年4月イタリアミラノで行われたDesign weekに、Design in the Age of Experienceというコンセプトで出展した。そしてイベント中建築に特化したHackathonワークショップが開催され、松長氏が参加された。
ZAHA HADID、FOSTER&PARTNERS、TESLA MOTORSなどの設計事務所が参加し、5チームに分かれ、48時間でデザインをするといったコンペティションが行われた。ほぼ初対面のチームで行う際にも、自分のデータの共有などに3D EXPERIENCEは有効だという。
今年のテーマは「データを利用し建築計画を立てる」というもので、松長氏のチームは日陰のデータをもとに建物の形状を考えていった。
これはミラノの都市の形状を加味し、人が歩くときに木漏れ日を生むような歩道のデザインだ。(上図とトップ画)
このデザインはパラメトリックデザイン(3次元のモデリングの際に変数を用い、その数値の変動(パラメータ)を操作することで出来上がるデザイン)でできているので、数値を変えるだけで様々なデザインを検証したり、影の形を予測してサイズを変える、といったことができる。
デザインで環境改善に取り組む「Breath/ng」
また、去年のDesign in the Age of Experienceに展示したプロジェクトで、「Breath/ng」というインスタレーションを、ダッソー・システムズのメインの展示物として隈研吾建築都市設計事務所がデザインを手がけた。
ミラノは空気汚染がひどいという話から、ダッソー・システムズが大気汚染を吸収してくれる機能があるBreathというファブリックを用意した。これを使ってインスタレーションを作るという取り組みだ。
隈研吾建築都市設計事務所は布の表面積をいかに最大化するかを考え、折り紙やプリーツといった発想から面を折るデザイン設計を行なった。

初めは紙でデザインを行い、その後ジェネラティブデザインを使い検証をし、布と布をつなげて様々な形を作ることができる折り方を考えた。
折る際の幅はどの程度が見栄えが良いか、スパイラルな形にした際どういう折り方をすれば良いのかということをパラメーターを使い、3Dを見ながらデザインしていった。

フレームも複雑な形状であり、特殊なジョイントが必要である。そのため適切なジョイントを設計し、3Dプリンターを使い実際にジョイントを作っていく。


隈研吾建築都市設計事務所では、自然素材を使ったり、その土地にある素材を利用したりと、自然と建物が共存できるようなデザインを心がけているという。
今回作られたインスタレーションは、一年間で約9万台分の車の排ガスを吸収する。

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