ChatGPTを頻繁に活用していると、ChatGPTが似たような回答を繰り返したり、最初に指示したプロンプトが考慮されなくなったりといった局面によく遭遇する。
例えば、「IoTについて小学生でもわかるように説明して」というプロンプトで指示をして、最初の文では指示通りわかりやすい回答をしてくれるが、その回答に対してさらに質問を進めていると、「小学生でもわかるように」という指示が考慮されなくる、というような状況だ。

上の写真のように、最初の文では小学生でもわかるようなわかりやすい言葉で説明してくれている。
しかし、続けて前文の「セキュリティ面での注意点」について質問すると、「小学生でもわかるように」という指示は忘れ、難しい言葉も使う一般的な回答になっている。

こうした煩わしさに対して、Open AIは新たに「Custom instructions」という機能を追加している。
今回は、ChatGPT特集の第二弾として、「Custom instructions」の概要や使用例、課題などについて紹介する。
第一弾の記事はこちら「今さら聞けない、ChatGPTを使った企画やアイディア出しの方法」
「Custom instructions」の概要
「Custom instructions」は、ChatGPTに「知っておいて欲しい前提条件」と、「どのように応答してほしいか」を設定することができる機能だ。
OpenAIはこれにより、「ひとりひとりの状況やニーズを考慮し、最適化されたAIを実現する」というコンセプトを同社のブログで打ち出している。
ChatGPTは、2023年7月20日より有料のPlusプランにおいて「Custom instructions」のベータ版を提供しており、8月9日からは無料版でも提供が開始されている。
利用方法は、アカウント名の横の3つの点々(下図①)を押すことで、「Custom instructions」が出現する。(②)

「Custom instructions」をクリックすると、以下のように条件を入力することができるボックスが出てくる。

上の枠には、「私の仕事は〇○です」「家族構成は3人です」「東京に拠点を置いています」「目標は〇〇です」など、利用者の前提条件を入力する。
下段には、出力方式に関する前提条件を入れる。例えば、「フォーマルに」「簡潔に」などの文体の指定や、「論理的に」「Step by Stepで説明して」などの回答出力までにいたる思考回路、「私の秘書として」「AI賛成派として」などのChatGPTの立場などが挙げられる。
「Custom instructions」の使用例
では、実際に「Custom instructions」を設定してみる。
今回も、ChatGPT特集の第一弾同様、「健康食品の販売促進プランを考える担当者」だと仮定して、「Custom instructions」を利用してみよう。
上段には、仮定の所属している企業の概要や担当職、得意とする分野や技術を記入し、下段にはChatGPTに上司としてわかりやすく論理的に回答してほしいという指示を記入した。

上記の「Custom instructions」を保存後に、サプリメントの新商品の販売促進案として、「人気のフィットネスクラブと連携した試供品配布」を提案してみた。すると、以下のような答えが返ってきた。

「Custom instructions」の下段に書いた、「費用対効果に厳しい私の上司として、論理的に話を聞いてください。」という条件をしっかりと反映させ、費用対効果を考えた懸念点が指摘されている。
さらに、「Custom instructions」の上段に書いた「専門技術:データ解析」という情報が加味され、「データ解析のスキルを活用して、KPIやコンバージョン率をしっかりと測定できる体制を整えることが重要です。」という回答が生成されている。
「Custom instructions」をオフにして同様の質問をしてみると、肯定的な全く異なる回答が生成された。

つまり、「Custom instructions」で設定した条件をしっかりと加味して回答が生成されているということだ。
その後も質問を続けてみたが、ChatGPTは「費用対効果に厳しい上司」という前提を忘れずに、費用対効果に着目しながら回答を生成してくれた。
加えて、「KPIの測定方法を教えて」など、通常上司には聞かないような質問をした場合には、「費用対効果に厳しい上司」という前提を無視して必要な情報を提示してくれた。

一方、「必要に応じて文章以外の方式を活用してください。」という、「Custom instructions」の下段に書いた条件に対応した回答はなかった。
これは、そもそも「必要に応じて」「文章以外」という指示が曖昧なため、反応してくれなかったのだと想定できる。
そこで、「出力方式は、箇条書きにしてください。」という条件に変えたが、今度は全ての文章が箇条書き形式になってしまい、「費用対効果に厳しい上司」という前提条件のような臨機応変な対応はしてくれなかった。
出力方式に関しては、毎回固定の型で出力してほしい場合以外は、毎回プロンプト(指示文)として書いた方が、柔軟に必要な方式の回答を得られると感じた。
利用用途が限定的な場合には有効
また、「Custom instructions」の条件とは関係のない質問に対する柔軟性も発展途上だと感じた。
例えば、「今日の献立を考えてください。」という全く関係のない質問には、「Custom instructions」の条件は加味せずに、普通に献立の回答を生成してくれた。

しかし、「面白い話をして」という指示に対しては、「業務に直接関連はありません。」と、費用対効果に厳しい上司としての立場から断られてしまった。

この塩梅がどの程度なのかは、現状は使いながら把握するしかなく、様々な利用用途においてChatGPTを活用したいと考えている人にとっては、逆に煩わしい機能となってしまうだろう。
Open AIのブログでも、「特にベータ期間中は、ChatGPTがCustom instructionsを常に完全に解釈するとは限りません。場合によっては、命令を見落としたり、意図しないときに適用したりする可能性があります。」と明記されている。
また、現状では「Custom instructions」の条件設定が一種類しかできないことからも、ChatGPTの利用用途が限定的な場合においては有効な機能だと感じた。
例えば、ブログの記事やアウトラインを書く用途で詳細な目的や細かい文体を設定したり、汎用的な秘書として活用するために役職や住んでいる地域を設定したり、教師が教育コンテンツ作成を目的に学習者の年齢・学年・学習目標などを設定したりといった状況が想定できる。
こうした利用用途が大半を占めていて、その他の質問はたまにしかしないという場合、「Custom instructions」のオン・オフで使い分けるだけでも便利に活用できるだろう。
しかし、複数用途でさまざまな前提条件をもとにChatGPTを活用している場合は、独自のブロンプトをまとめて保存しておいた方が早く便利に活用できると感じた。
もちろん今後、精度の向上や、複数の「Custom instructions」を設定できるようになる可能性もあるため、引き続きチェックしていきたいと思う。
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