2016年6月6日~6月9日に、PTCが毎年行っているイベントLiveWorxが、アメリカボストンで開催された。
その基調講演で、PTCのプレジデント兼CEOのJim Heppelmannは、従来はモノといってもフィジカルなモノしかなかったが、現在は、コミュニケーション、クラウドが足されることによってこれらを統合して「スマート・コネクテッド・プロダクト」と呼ぶようになってきていると述べた。
その後2016年7月6日、日本で行われた「PTC LiveWorx2016ハイライト説明会」にて、PTCジャパン株式会社 ソリューション戦略企画室 ディレクター・フェロー 後藤 智氏が、製造業におけるモノがどう変わってきているかということを、下の図を使って説明した。
まず一覧左端が、従来のトラクターだ。トラクターに通信機器がつくことで、スマートトラクターとなる。この段階では主にトラクターの状況をセンシングして画面に表示するということができる。そして、トラクターを他の「種まき機」や、「耕運機」などと連携することで農業機械システムができあがる。
さらに、クラウドを使って灌漑システムや気象データなどとつなげていくことで、農家の活動全体を管理する複合システム(System of Systems)が出来上がる、という発展形を示した。

つまり、トラクターを作っている機械メーカーだと思っていたら、IoT化をすすめて他のデータとも連携することで、農家の経営コンサルティングもできるくらいになっているというのだ。
そして、今、「IoTとAR/VR、分析」を足すことで、新しいデジタルものづくりイノベーションが始まったという。これまでの「モノ」とつながるIoTだけでなく、「ヒト」ともつながることで、IoTの概念自体に変化が生まれるという。
モノが通信するだけでなく、ビデオコミュニケーションやAR体験などをヒトに足すことでイノベーションが起きるのではないかということだ。
もともとPTCは3DCADに強い会社で、様々なCADデータを持っているが、例えば、クルマのフェンダーミラーに変更があった場合、従来であれば物理試作をしないとイメージがつかなかったが、今後はARを活用することであたかも物理試作をしたようなイメージが持てるようになるというのだ。
他にも、工場の見える化が実現できるKepwareや3D設計をしながらIoT設計もできるCREO4.0、PLMパッケージWINDCHILLなどの製品も紹介された。
また、産業分野でのIoTというと、予防保全の話題が多いが、PTCではここを回していくためのサービスプロセスも作っているということだ。
現状把握し、センサーに異常検知させリモートモニタリングを実現する。その上で機械学習を活用した故障を予測し、状況に応じたメンテナンスを行う。メンテナンスの際は、リモートサービスや、フィールドサービスへの発注の自動化、パーツの在庫計画の最適化などを行うというものだ。
これらのプロセスを自動化することで、戦略的な予測洞察を行ったり、リスク管理を行うことができる。
2018年までに多くの製造業がサービス型の製品(Product as a Service)を提供するといわれる中、こういったサービスプロセスの自動化にも注目していく必要がある。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。