裕幸計装株式会社、国立大学法人九州大学、学校法人工学院大学、株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は、ベトナムにおける環境汚染の原因のひとつであるエビ養殖汚泥を活用し、温室効果ガス削減や電力の安定供給などを目指す「省エネ型エビ養殖統合システム」を開発し、その実証運転を開始する。
ベトナムの主要産業であるエビ養殖は、電力の供給不足や、養殖汚泥による周辺土壌・地下水の汚染、温室効果ガスの発生、養殖池での病気蔓延など、複合的な要因によりエビの大量死や周辺地域の環境汚染といった課題を抱えている。
そして今回、これらの課題を解決すべく、「循環型エネルギー創出ユニット」と「エビ増産ユニット」から成る「省エネ型エビ養殖統合システム」が開発された。
「循環型エネルギー創出ユニット」では、養殖汚泥とレモングラスの加工廃棄物を混合・発酵させ、生成されたバイオガスを、固体酸化物形燃料電池(SOFC)に燃料として供給することで発電を行う。
発電した電気は、曝気装置など養殖設備に使用されるため、循環型の創エネ技術であるとされており、カーボンニュートラル2050を目指す日越両政府の取り組みに貢献するものなのだという。
IoTによる「エビ増産ユニット」では、IoTデバイスを使い、溶存酸素濃度、pHなどをセンサで計測する。また、IoTプラットフォーム設計や養殖池の水質データに加え、バイオガス発酵槽とSOFCの状態監視などを含むデータの保存・可視化を行い、データの閾値監視やアラート通知機能などのシステムを構築することで、養殖環境とエビの育成状況との相関性を分析する。

実証期間は2024年7月から2025年6月までで、ベトナム南部ティエンザン省にて実施予定だ。これにより、単位養殖池(1,000m3)あたり年間約40t-CO2の削減、およびエビ生残率85%(年間平均生残率57%)という成果を見込んでいる。
従来の養殖手法を行っている養殖事業者に同システムを導入した場合、単位収穫重量あたり最大90%以上のCO2排出量削減が期待できるのだという。
また、エビ養殖の効率が向上することによる養殖事業者の売上増加や、これまで川や海に垂れ流しされてきた養殖汚泥をエネルギー源として有効活用することによる環境改善など、ベトナム社会におけるエビ養殖業を取り巻く課題解決へ寄与するとされている。
なおこの実証は、NEDOの実証事業の助成を受け、九州大学、工学院大学、IIJが委託先として参画し、実施するものだ。実証は、株式会社三菱総合研究所をはじめ、日越の研究機関・民間企業より技術支援を受け実施されるとのことだ。
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