スマートスピーカーを利用したことがある人なら、一度はスマートスピーカーが声を認識してくれなかった経験があるのではないだろうか。
認識してもらえないと二倍の時間がかかり、便利さは半減する。そのためはっきりと大きな声で話そうとするが、例えば家族が寝ている時などは少しためらってしまう。
そのような状況でも、日本テキサス・インスツルメンツが発売を開始した新しいアナログ/デジタル・コンバータ(ADC)「TLV320ADC5140」(トップ画)によって、小声で話したり、遠くから話しかけても利用可能になスマートスピーカーが登場するかもしれないのだ。
[参考記事] テキサス・インスツルメンツ、従来比4倍の距離から音声認識可能なBurr-BrownオーディオADC「TLV320ADC5140」を発売スマートスピーカーにおけるADCの役割は、声をデジタル変換することだ。
日本テキサス・インスツルメンツが発売した「TLV320ADC5140」では、他社製品と比較して4倍離れた場所からもクリアな音をキャプチャできるADCとなっている。
また、騒音の大きい環境やスピーカー出力のすぐ近くであっても、低歪オーディオ録音が可能で、様々な環境で録音することが可能だ。
このような処理を行うには消費電力が気になるところだが、「TLV320ADC5140」にはデジタル信号処理の負担を軽減する機能が内蔵されているため、システムの信頼性を損なわずに設計サイズを縮小することができるという。
このADCはスマートスピーカーはもちろん、サウンド・バー、ワイヤレス・スピーカー、高解像度テレビ、IPネットワーク・カメラ、テレビ会議システム、スマート家電などのアプリケーションに用いられることが想定される。
ここで、家庭でスマートスピーカーを使うというシーン以外に、どのようなシーンでこのADCが活きてくるのか、過去の事例からユースケースをみつけ想定してみる。
作業現場での音声認識
これはダイハツが開始した音声による点検結果入力システムだ。
[参考記事] ダイハツの「音声による点検結果入力システム」、法定12ヶ月点検での運用を開始自動車の整備士は、点検・整備を行う際に記録簿に手書きで結果を記入し、顧客に結果を報告する書類の作成を行なっている。
その作業をウエアラブルマイクに対して話すことで自動入力されるというシステムだ。
このような機械音や人の声が行き交う場所で、音声認識システムを導入する場合には「TLV320ADC5140」の特徴が活かされると考えられる。
重要な点検結果の入力という工程であるからこそ、ノイズに負けない音声認識が必要だ。
複数人での会話にも
AWSは音声をテキストに書き起こす「Amazon Transcribe」というサービスを行なっている。
[参考記事] もう議事録はいらない?日本語の書き起こし精度を試してみたこのように会議などの書き起こしを音声認識により行うようになってくれば、広い会議室や少し雑音がある場所でも音を正確に拾って欲しいというニーズが出てくるだろう。
会話の音声認識は、言葉の理解の向上が重要であるが、一方で音を拾う技術の向上も同時に必要になってくると考えられる。
このように、小声でも認識してくれる機能というのは、スマートスピーカーを家庭で利用するというシーンのみならず、様々な利用シーンの利便性につながっていくことが想定される。
スマートスピーカーをはじめとする音声認識の技術が一般的に利用されるようになってから数年が経った。
そこから生まれる新たなニーズに対する細かな技術革新が着々と進んでいることを感じる。
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