シュナイダーが考えるIoT、「革命ではなく進化」
白幡: 「EcoStruxure」は自社だけで展開するわけではなく、他社とパートナーシップを組んで事業を進めていきます。私たちは、本業である機器ビジネスを突き詰めていくかたちでIoT化を進めていきたいので、得意ではない領域は、他社と組んで最新のテクノロジーを使うというスタンスです。
そうして自分たちの事業を地道に一歩一歩変えていくことで、「気がついたらとんでもない革命が起きている」ということをシュナイダーはやりたいのです。
そもそも、シュナイダーはパートナーシップが非常に重要となるビジネスモデルを採ってきました。機器メーカーですから、直販モデルではなく、パートナーとの協業モデルの会社なのです。商流はマルチレイヤーで、ディストリビューターさん、リセラーさん、サブコン・ゼネコンさんなど、エンドユーザーに加えてさまざまなステークホルダーがいます。
IoTによって、B2Bでもエンドユーザーに価値を提供するビジネスに世の中のゲームルールが変わってきてはいます。しかし、私たちは従来の“パートナーとの協業DNA”を踏襲していくことが強みになると考えており、そうしたビジネスのエコシステムによって製品を提供していきます。
私たちは、アーキテクチャのひな型をたくさんもっています。たとえば、食料関係ではこの組み合わせ、電力でも空港向けだったらこの組み合わせ、というように機器とエッジコントロール、アプリケーションのアーキテクチャを数千という単位で蓄積しています。
私たちはそれを「TVDA(Tested, Validated, and Documented Architectures)」として、SIerのエコシステムに提供しています。オーストラリアのSIerが病院向けにつくったプラットフォームをインドのSIerが買うというような、マーケットプレースとしても機能します。そうしたコミュニティマネージメントを含めたビジネスエコシステムの運営を、従来からずっとやってきたのです。

小泉: なるほど。お話を伺っていて、とても興味深いビジネスモデルだと感じます。「EcoStruxure」のアーキテクチャモデルそのものはシンプルですが、それがエコシステムを通して広がっていくことで、御社のビジョンに近づいていくように思えます。
やはり機器を持っているということが重要ですね。IoTはまず「モノ」がないとビジネスの話になりません。
白幡: そうですね。私たちのCEO(ジャン=パスカル・トリコワ氏)はいつもこう言います。「IoTは革命ではなく進化だ」と。つまりどこかとんでもないところにジャンプしようとしているわけではなく、一歩一歩進化を進めているということです。
シュナイダーは、自分たちが提供する機器がいつかネットワークでつながるようになり、電力であれば「エネルギーマネジメント」、インダストリーであれば「オートメーション」の時代がくるだろうと、20年以上も前からビジョンとして描いていました。それを一歩一歩進めてきたのであり、いまはその延長線上にあるのです。
ただある意味、地味ですよね(笑)。ブロックチェーンでもAIでもありませんから。
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。