IoT・AIは天気予報も変える、「すべてが観測機になる時代」 ―ウェザーニューズ執行役員 石橋知博氏インタビュー

変わる天気予報のニーズ、生活者は“瞬間”の情報を求めている

石橋: そして、今年の7月から「5分ごと」の天気予報が見られるサービスを新たにスタートしました。

小泉: さきほどの雨雲レーダーを見なくても、アイコンを見れば5分ごとの天気が簡単にわかるというものですね。

石橋: はい。これまでは数時間ごとの天気予報が一般的でした。でも、都会に住んでいるとまさにそうですが、私たちが知りたい天気情報というのは、オフィスから駅に着くまで、あるいはランチに行くまでといった10~20分くらいのことですよね。

アプリのユーザートラフィックを見ると、もちろん週間予報を気にする方もいますが、いちばん見られている天気予報のページは、やはり1~3時間の範囲でした。また、見るタイミングはお昼休みの直前、あるいは17~18時の帰宅時です。駅までの20分をどうするか、歩くのか自転車で行くのか、傘を持っていくのか、そうしたユーザーの強いニーズを感じていました。

IoT・AIは天気予報も変える、「すべてが観測機になる時代」 ―ウェザーニューズ執行役員 石橋知博氏インタビュー
ウェザーニューズが提供するスマートフォンの天気予報アプリ「ウェザーニュース・タッチ」のトップ画面上部。8時5分の時点で、20分後の天気を「サー」というアイコンで予報している。

小泉: 天気予報のアイコンが面白いですよね。雨の場合でも、「サー」、「ポツポツ」とか。

石橋: そうなんですよ。天気予報には、「晴れ時々曇り」とか昔ながらの表現がありますよね。でも、5分ごとの天気なのに「晴れ時々曇り」とか意味がわからないわけですよ(笑)。

「雲量が8割だと晴れ」、「雲量が9割だと曇り」などの定義もありますが(日本式天気記号)、そのような基準を把握している人は殆どいません。また気象庁と同じアイコンにすると、雨は「雨」しかないので、どんな雨かわからない。1時間に10ミリの雨といった表記もありますが、よくわからないですよね。

そこで、「影がなし」(曇り)とか「影うっすら」(少し太陽が見える曇り)、雨だと「サー」、「ポツポツ」、「ザーザー」、「ゴー」など、直感的にわかりやすいアイコンにしたのです。

小泉: なるほど。

石橋: 実は、この「ポツポツ」や「ザーザー」にもちゃんとした理由があります。私たちのアプリには、「ウェザーリポート」という、ユーザーさんが現在地の天気をリポートできるしくみがあります(2005年からスタート)。1日に写真付きで3万通ほどのリポートが上がってきます。

そのリポートにあるコメントをすべて分析したのです。たとえば、こんなコメントがあります。

「7月も残すところあと2日。朝からじりじりと日が差していますが、風が強いせいか、ここ何日かの暑さが少し和らいでいる、そんな感じがします」

このようなテキストをすべて分析してみたところ、「サーという雨」や「ゴーという猛烈な雨」などの表現が多かったのです。そうしたコメントを実況値(実際に何ミリ降っていたのか)と照らし合わせ、「この雨量で予報するならこのワードだ」という相関表をつくったのです。

IoT・AIは天気予報も変える、「すべてが観測機になる時代」 ―ウェザーニューズ執行役員 石橋知博氏インタビュー
株式会社ウェザーニューズ 執行役員 石橋知博氏:父は同社創業者の博良氏。日本ヒューレット・パッカードを経て2000年にウェザーニューズ入社。2003年にモバイルサービス事業を立ち上げ、2005年にはユーザーが自ら現在地の天気を報告できる「ウェザーリポート」のサービスを導入。2012年1月から米国ニューヨークにて海外事業に従事、現在は執行役員として「B to S(Business to Supporter)」事業を統括している。

いまでは、アプリの画面に「現在地の天気を報告する」というアイコンがあるので(上の画像)、そこからいまの天気を「ポツポツ」や「サー」の中から簡単に選択できます。

実は、私たちの天気予報はユーザーさんからのリポートでかなりの部分をつくっています。ユーザーさんからのリポートを“方程式”に入れることで、目先3時間くらいの天気を精度よく予報できるのです。AIを導入するよりずっと前から、このしくみを使っています。

小泉: そうだったのですか。

石橋: はい。同じ曇り空でも「影が見える、見えない」といったこまかい違いは、そこに観測機がない限りわからなかったのですが、ユーザーさんの報告でわかるようになるのです。

次ページ:ゲリラ豪雨を予測、ユーザーが自らつくる天気予報

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