IoT・AIは天気予報も変える、「すべてが観測機になる時代」 ―ウェザーニューズ執行役員 石橋知博氏インタビュー

ゲリラ豪雨を予測、ユーザーが自らつくる天気予報

石橋: そもそも観測機は、ヒトの視点で天気を見ていません。気象レーダーが「雨」と認識しても、雨粒が地上に降ってくる前に蒸発してしまい、地上では雨が降っていないということがよくあります。

また、レーダーは雨雲ができやすい地上2 km以上の位置に電波を当てているために、ゲリラ豪雨を見逃してしまうという問題があります。ゲリラ豪雨は地上から2km以下の位置にできる小さな雲が発生源となりますから、レーダーの画像に映ってこないのです。

ですから、完全な天気予報をつくるには、レーダーの予報を補完するデータが必要です。そこで、ユーザーさんのリポートが生きてくるのです。このようなしくみを導入しているのは、当社だけです。

小泉: そのように天気予報がつくられているのですね。全く知りませんでした。

IoT・AIは天気予報も変える、「すべてが観測機になる時代」 ―ウェザーニューズ執行役員 石橋知博氏インタビュー
株式会社アールジーン代表取締役/IoTNEWS代表 小泉耕二

石橋: 実は、このサービスのきっかけとなったのは「写メール」です。写メールが登場した当時、多くの人は待ち受けに自分の子供の画像を貼るなどするくらいで、キャリアさんが想定していたよりも写真を添付して送りませんでした。

小泉: 自撮りして終わりでしたね(笑)。

石橋: はい。画像の送信料が当時は高かったのです。でもキャリアさんとしては、カメラで撮った画像を自分の携帯電話に保存されても1円も儲かりませんから、何か写真を送りたくなるようなアプリケーションを求めていました。

そんなこともあり、「空の写真をユーザーさんに送ってもらって解析したら、天気予報に使えないだろうか」と、ある時ふと思いついたのです。最初はぼんやりしたアイディアでした。でも、台風が来た時に試しにやってみたら、結構みなさん送ってくれたんですよ。これはもしかしたら行けるかもしれないと思いました。

決定的だったのが、「桜の開花前線」です。気象庁が、毎年春が近づくと発表するものです。でもあの前線は大まかなもので、実際には山の標高の違いなどで、桜がまだ咲いていないといった場合も多い。そこで、ユーザーさんが送ってくれた桜の写真をマッピングしたら、本当の桜前線ができるのではないかと思ったんです。それを、「さくらプロジェクト」として打ち出しました。

その結果、本当に桜前線が見えたんですよ。それを契機に、「ウェザーリポート」のサービスを続けてきました。ユーザーさんも続けていくのが大変ですから、台風が来た時や、桜や紅葉の時期に企画を考えたり、ポイントが貯まったらオリジナル製品をプレゼントしたり、ゲーミフィケーションの要素も取り入れてきました。

そうして、いまでは1日約18万件のリポートが上がってくるようなコミュニティに成長しました。彼らは台風などが来ると、何か使命感のようなものを持ってリポートを上げてくれます。ユーザーさんには本当に感謝しています。

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