IoT・AIは天気予報も変える、「すべてが観測機になる時代」 ―ウェザーニューズ執行役員 石橋知博氏インタビュー

ウェザーニューズの観測網は”全国13,000か所+ヒト”

小泉: ユーザーさんもわかっているのですね。自分のリポートが御社の天気予報に役立っているということを。

石橋: そうですね。そこからぼくが思うのは、IoT時代にはすべてが観測機になりうるということなんです。

アメダスを1台設置するには数千万円、運営・通信経費などで年額4億円ほどの費用がかかります。ですから天気予報というのは、基本的には国家予算レベルのバジェットがないとできない事業なのです。

でも、ぼくらにとってアメダスはもちろん重要なのですが、IoTの時代はそれだけではありません。スマートフォンを持ったヒト自身が観測機でいいのです。ヒトの次はクルマです。ぼくらからすると、町中を走っているクルマもすべて観測機です。

IoT・AIは天気予報も変える、「すべてが観測機になる時代」 ―ウェザーニューズ執行役員 石橋知博氏インタビュー
ウェザーニューズが保有する天気の観測網。全国に約13,000か所ある。そのうち1,300は気象庁の観測機「アメダス」。3,000はKDDIの基地局に設置した観測機。残りの9000は、その他の企業や自治体に設置している観測機。

小泉: ヒトが行かないような場所はどうですか。

石橋: それについては、まず私たちの観測網をお見せしますね(上の画像)。全部で13,000箇所あり、これは日本で最大の観測網です。

小泉: こんなにあるんですか。

石橋: はい。観測する手段としては、主に3種類です。1つは、全国に1,300箇所ある気象庁さんのアメダスです。

もう1つは、KDDIさんと一緒に行っている事業なのですが、携帯電話の基地局に小さな観測機を設置しています。いまでは全国に3,000か所あります。

正直、山の頂上など本当にヒトが行かないような場所では、天気予報は必要ありません。一方、ヒトが住んではいないけれども、何かしら行く必要があるような場所には、必要です。

そういう場所には必ずキャリアさんの基地局があります。基地局は電波や電気があり、動物や人も通れないようになっています。観測機を置くには絶好の環境です。

KDDIさんは全国に数十万か所の基地局があるのですが、その中から当社の気象予報士が、「ここに観測機が欲しい」という場所を選定し、設置してきました。世界においても、これだけ細かいメッシュで観測網を持っている国は他にありません。

IoT・AIは天気予報も変える、「すべてが観測機になる時代」 ―ウェザーニューズ執行役員 石橋知博氏インタビュー
左は天気予報向けセンサー「WxBeacon2(ウェザービーコン2)」(オムロン製)。気温・湿度・気圧・照度(単位:ルクス)などのデータを取得する。フックがついているので、カバンなどに括り付けて持ち運びが可能。

小泉: 持ち運び用のセンサーもリリースされていましたよね。

石橋: はい。「WxBeacon2(ウェザービーコン2)」という製品で、アプリの会員さんで2,000ポイント以上の方にお渡ししており、一般販売もしています。気温・湿度・気圧・照度(単位:ルクス)などのデータを取得することができます。

小泉: このセンサーが必要な理由は何でしょうか。全国13,000個の観測網だけでは駄目なのですか?

石橋: さきほどもご説明したとおり、固定の観測機では地上のこまかい天気がわからないことがあります。そこで、(ヒトの視点による)「ウェザーリポート」が必要になってくるわけですが、このしくみでは気温や湿度などの報告はできません。

実は以前、自前の温度計を持って、天気を報告する時にわざわざ温度を入力してくれていたユーザーさんがいらっしゃいました。それがコミュニティ内でちょっとしたブームになってきたので、それだったらぼくらから何か持ち運びができる簡易的な観測機をお渡ししようと、現在提供しているのがこの「WxBeacon2」です。

小泉: なるほど。

石橋: 「ウェザーリポート」で天気を報告する際、スマートフォンと「WxBeacon2」がBluetoothでつながっていれば、「WxBeacon2」が自動的に温度や湿度のデータを取得するしくみとなっています。

次ページ:もう一度、ヒトが天気予報をつくる時代へ

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