【後編】「ものづくり白書」を読もう —変革の手がかりは細部に宿る

第1章-3節の要点①:「Connected Industries」とは何か

第四次産業革命と人材不足の「ダブルパンチ」を乗り越えるには、「現場力」を維持・向上する新たなしくみが必要であり、そのためには経営者が強いリーダーシップを発揮してビジネスモデルを変えていく必要がある。これが、第1章1節~2節の主なメッセージです。では、具体的に何をすればいいのでしょうか。その答えは「Connected Industries」にあると第3節では説明しています。

ものづくり白書を読もう —変革の手がかりは細部にある
第1章-3節、「Connected Industries」の概要(本文p.130)

ここで、よく登場するキーワードである「Society5.0」、「Connected Industries」、「第四次産業革命」という言葉の意味について補足します。

「Society5.0」とは、政府がかかげる日本が目指す「社会」の一つの姿です。内閣府のホームページには、次のように明確に定義してあります。

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会

サイバー空間とフィジカル空間の融合はCPS(Cyber-Physical System)と言われ、「インダストリー4.0」と同様、製造業のIoTに関わる仕事をしている人であれば、なじみのある概念です。一方で、生活者にとってはイメージがわきにくい言葉かもしれませんが、そうは言っていられません。未来の日本がCPSを基盤にした社会になると明確に示されていることを、私たちはまず知るべきです。

ものづくり白書を読もう —変革の手がかりは細部にある
「Society5.0」のイメージ図(内閣府のホームページより)

では、今の社会は何かというと、「情報社会(4.0)」です。4.0と5.0、何が違うのでしょうか。インターネットが普及して以来、私たちの世界は既にフィジカル空間とサイバー空間に分かれています。サイバー空間とはいわゆるクラウドのことで、フィジカル空間は私たちが生きているこの現実世界のことになります。

サイバー空間を使うことのメリットは、情報に簡単にアクセスできることでした。これにより、私たちの生活はとても便利で豊かになりました。ただ、サイバー空間に働きかけるのはいつも人間の方であり、サイバー空間の方から私たちに働きかけてくることはありませんでした。

しかし、5.0になるとそこが決定的に変わります。私たちが意図しなくても、サイバー空間は自ら私たちに働きかけてくるのです。IoTによる膨大なデータと人工知能(AI)がそれを可能にします。こうしたしくみによって新しい価値を生み出して経済を発展させ、これまで解決できなかった社会課題を解決できるようになる。これが、「Society5.0」が描く世界です。

いつの時代も社会をつくる基盤は産業です。「Society5.0」をつくるための産業の在り方が「Connected Industries」です。IoTであらゆるモノや機械などがつながると、AIが学習するデータがたまります。データがたまると産業の垣根が消滅し、企業やヒトもどんどんつながります。そうして生まれた新たなビジネスモデルが「Society5.0」の基盤をつくるのです。

「第四次産業革命」とは、その根幹にある技術の変化です。これらは同時並行であり、同じものを別の角度から見ているに過ぎません。工場や研究所で技術に携わっている人であれば、それは「第四次産業革命」かもしれませんし、オフィスで事業企画を練っている人であれば「Connected Industries」なのかもしれません。そして「Society5.0」は、誰もが普段目にする町の景色にもいつか現れるはずです。

次ページ:第1章-3節の要点②:30ページにわたる事例集とシステム思考

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