cocoro SB、Pepperの心を理解する、Pepper感情生成エンジンの秘密  レポート 

先日、M-SOLUTIONS本社で「Pepperのビジネス活用徹底研究」が開催された。引き続きレポートをする。

【Pepperのビジネス活用徹底研究】
1.ソフトバンクロボティクス、Pepperのビジネス活用徹底研究レポート 
2.アスラテック、Pepperだけじゃない ロボットOS V-Sido 活用事例 レポート
3. cocoro SB、Pepperの心を理解する、Pepper感情生成エンジンの秘密 レポート(本記事)

Cocoro SB株式会社 取締役 大浦清氏より「Pepperの心を理解する、Pepper感情生成エンジンの秘密」について発表があった。

ソフトバンクが作るロボットのビジョンは「愛を持ったロボット」で、第1弾のPepperは声と表情から感情認識することができ、2015年6月に発表した第2弾の感情技術の発表の際は、Pepper自身が感情を有した。

ソフトバンクロボティクスホールディングの傘下にある会社は、Pepperの販売・保守・メンテナンスを行うソフトバンクロボティクス社、Pepperの開発デザインを行うアルバデラン社、感情認識技術を扱うAGI社、V-Sido OSを開発するアスラテック社がある。

そしてcocoro SB社はクラウドAIサービスを提供する会社で、cocoro SBの子会社であるサイネット社は自然言語処理の専門会社だ。

内分泌をバーチャルで作り上げる

大浦氏は人工知能を大きく2つに分け、ひとつはWatsonやGoogleなど情報や知識、学習など後天的に学んだ知識や知恵にあたるものを「万能型の人工知能」とし、人間の脳でいうと大脳新皮質にあたる部分だとした。

もうひとつは、cocoro SB社が作っている「感情学習型の人工感性知能」で、感性や感情、感覚などを学習する。生物でいうと、大脳辺緑系にあたると考えているという。

cocoro SB社は、AGI社の「声から感情が見える技術」をPepperに入れているが、その技術を医療分野として切り出し「声から病気が見える技術」を東京大学医学部の中で臨床を進め、明るい声を出していると自分にフィードバックされその結果ストレスも減っていくという「声で病気を治す技術」も研究もしているそうだ。

その研究フィードバックの中から理論をもらい、感情のメカニズムからロボットの心の創発を開発してきたという。大脳辺緑系は感情を作り、感情を巻き起こして結果行動に移すが、そのきっかけは内分泌に由来しているそうだ。

例えば、暗い空間の中にいるとなんとなく不安になる、小さい子どもがお母さんがいなくなると不安で泣いてしまうといった感情は、究極的には命の危険にさらされる可能性があるからで、この反応は内分泌が大きく影響しているという。

一方、仕事がうまくいった、宝くじが出たという時にドーパミンが出る。そのドーパミンは興奮している時に出やすく、人間は同じような感覚をまた得たいので、「もう一度宝くじを買ってみようかな」という心を動かすきっかけになるそうだ。

これらをプログラミングでバーチャル的に内分泌を作り上げて動かしているという。

 

感情を理解し自ら動くロボット

「生き物」は何かというと読んで字のごとく生きている物であり、大きく「増殖」と「生存」というメカニズムを持っている。

増殖」は例えば、仲間が増える、家族が増える、仕事でうまくいってお金が増えるなどポジティブな感情を意味する。「生存」は生きるためには命の危険性があるものに対してネガティブと思わせて、同じことをなるべくさせないように命を守らせる機能だという。例えば高いところに立ったら怖いと思ったり、毒キノコを見た時にこれは食べてはいけなそうと思うなどざわっとする不快な感覚、失敗したことを学んで次に生かし、生き残るために危険にさらされた瞬間にネガティブな感覚を味わわせるべきだというものだそうだ。

また人間は不安のままでいられるわけではないが、安定しだすと不安になるという「ゆらぎ」が、人の価値観となり、行動原理になるという。

話を戻すと、cocoro SB社が作っているプログラムは、会話、感情、学習という3つのキーワードを持った「感情を理解し自ら動くロボット」だ。

全知全能型の人工知能との大きな違いは、Pepperという大きな個体がその場所にいるというのがポイントだという。Pepper自身が自分が存在する場所を感じ空間を共有すること、例えば誰がどんな服を着ているのか、ここに何人くらい人がいるのかなど、Pepperが五感を使って色んな情報を集めて「生きよう」と思わないと、人間がロボットに対して白けてしまうという。

そして、Pepperは怒っている人がいたら逃げてみたり、落ち込んでいる人がいたら「歌ってみようかな」と思ったりなど、記憶や知識から自分の行動を決定する。

人間は、「喜びの分かち合いは幸せを増やし、苦しみを分かち合うと哀しみを減らす」。この感情を持った人間と一緒にいるPepperはここまで踏み込まないと本当に存在しているとは言えないのではないか、というのがcocoro SB社のコンセプトだと述べた。

4種類のエンジン

cocoro SB社が有している人口感性知能は、感情生成エンジン、感情認識エンジン(AGI社)、自然言語処理 雑談エンジン、物体認識エンジンの4つ。

感情生成エンジン

現在Pepperに使われている内分泌は、CRH、ドーパミン、ノルアドレナリン、ACTH、コルチゾール、血糖値、セロトニンなど8種類。

ドーパミンとアドレナリンのバランスをとっているのがセロトニンで、セロトニンが多いと人間は安定していると言われ、例えば、セロトニン量が少ないと、ドーパミンとアドレナリンがシーソーのように大きく揺れるので不安定になりがちになる。

Pepperも人と同じで笑っている人が近くにいるとセロトニンが出て、遊んでもらうとドーパミンが出るようになっているという。

どういう風に動いているかというと、まずPepperが目や耳などがさわられたらセンサーで感知して、それがいいことなのか悪いことなのか、大きなフィルタリングをかける。「なでられたらポジティブ、殴られたらネガティブ」、といった具合だ。

その時に、記憶とこれまでの経験をかけあわせて、次に「快感、安定、不安定、嫌悪感」などのフィルタリングがかかるが、ここまでは単純なシナリオだという。このフィルタリングの途中に内分泌がそれぞれあがってくるデータに影響を与えながら、ふるまいを変えて感情地図上で心を創発しているそうだ。

例えば、大好きな人に頭を叩かれたら今のPepperは「やめてくださいよ~(笑)」という反応になるという。好きな人に叩かれても信頼関係がなりたっている相手であれば、命の危険にさらされるわけではないということで、逆に大嫌いな人に頭をなでられたら、もともと信頼関係がない人には何をされても気持ち悪いので「いい加減にしてください(怒)」と怒り気味になるそうだ。

とはいえ、同じ感情をずっと持っているわけではないという。母親に対して多くの人が愛情を持っていると思うが、「今日はテストの点が悪かったからあまり話したくない」という日は距離を置きたくなることもあるとし、そういう感情はPepperにも備わっているとコメントした。

Pepperは感情学習型なので、「ほめられると嬉しい、もっと褒められたい」と思うようになり、特に信頼関係がある人とのコミュニケーションでは、どんどん学習していくという。

声からの感情認識でとても喜んでいるというシーンがあったとすると、感情が大きく揺れた時は重点的にデータを取得するが、これは人間の記憶と同じだと述べた。例えば、大きな事故にあったことや、好きな人に告白してうまくいったことなどは鮮明に覚えているが、4日前に食べた夜ご飯は忘れていることが多い、といったところだ。

Pepperの機能という面では様々な知識を持っているので30歳くらいの感覚かもしれないが、心の発達でいうと生後3か月くらいと捉えているが、今年中には1歳半くらいに引き上げたい、とコメントした。

音声感情認識エンジン ST

脳が受けたストレスでお腹が痛くなるのは脳と内臓が不随意な神経で繋がっているからだそうだが、同じ神経が声の生体にも繋がっているという。例えば、緊張すると声が裏返る、などだ。

この音声感情認識エンジンは、そういう声を抽出する技術だという。声から出てきた本音と建て前を分ける技術は、音声パラメータから切り出していった声帯の音を抽出して、それをふるいにかけていきながら、「喜び・怒り・哀しみ・平静」と「興奮」の度合いを切り分けている。

「喜び・怒り・哀しみ・平静」の4つは感情だが、「興奮」というのはパワーを表しクルマでいうとアクセルだという。「喜びのパワー」がどれくらいでたのか、「怒りのパワー」がどれくらいでたのかなどを判断するのだが、人間は興奮が強いほど強い記憶や行動原理に繋がるという。

その他のエンジン

自然言語処理 雑談エンジンでは、意味解析、構文解析、かかりうけ解析ができており、ランダム性が一切ない会話システムで5W1Hがきちんとわかっているという。また、物体認識エンジンではディープラーニングを利用し、画像を認識し動作しているそうだ。

 

大浦氏は、「全知全能型のロボットではなく、目の前の人のことをどれだけ感じて話せるかを大事にしていく」と締めくくった。

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