日立グループ、四十四田発電所における保守・点検業務のスマート化実証の第1フェーズが完了

多くの水力発電所は、山間部などの交通が不便な場所にあり、かつ無人運転で長期間にわたり電力の安定供給を維持している。遠隔地から作業者が頻繁に保守・点検業務に赴いているが、作業者にとっても負担は大きく、かつその熟練性に依存している。そのため、近年デジタル技術の活用による遠隔監視や予兆診断の導入や、技能伝承の推進による保守・点検業務のスマート化が求められている。

日立三菱水力株式会社と株式会社日立製作所(以下、日立)、株式会社日立産機システムは、岩手県企業局の四十四田発電所の保守・点検業務において、以下の3つの観点で保守・点検業務のスマート化の実証実験を行い、第1フェーズを完了したことを発表した。

  • 現場センシング・デジタライゼーションによる現場設備の状態可視化(遠隔監視)
  • 計器の値や設備の稼働音を、カメラ機能やマイク機能を搭載した日立独自開発のレトロフィット無線センサーを用いて数値化し、遠隔での設備状態の確認が可能となった。また全天球カメラ(※1)やPTZカメラ(※2)を備えた自律走行型の巡視ロボットにより、事前に指定した走行経路を移動し現場設備の計器や制御盤の表示等を撮影する実証も行った。遠隔運転も可能で、固定センサーでは確認できない箇所を監視できる。

    将来的には、運転データをクラウド上で管理する事で、ダム管理などのデータとも連携し、ダムの水位と発電量の相関性を鑑みた経済合理的な水力発電所の運用支援へ応用していくとのことだ。

  • 現場データのAI分析による最適な運用改善の立案(予兆診断の精度向上)
  • 日立産機システムのIoT対応コントローラにHitachi AI Technology/Adaptive Resonance Theory(以下、ART)を組み込むことで保守・点検業務におけるエッジコンピューティングを実現し、現場側の運転データを使って、プラント運用および設備の状態変化に関する予兆診断モデルを実装した。

    この診断モデルの精度向上を図ることによって、最適な設備点検・修繕時期を示す指標として活用することが期待でき、適正に定期点検のスケジューリングや保守・点検業務内容を決めることで、保全業務の効率化と高度化につながる。

  • 保守・点検業務における熟練技術者のノウハウをデジタル化(技能伝承)
  • 保守・点検業務における手法・手順など熟練技術者にしか蓄積されていないノウハウを、行動観察および技能伝承ワークショップを通して引き出し、見える化・デジタル化した。また、そのノウハウをクラウド上で管理することで、多くの作業者へタイムリーかつ各自の技能レベルに応じた情報提供を可能とした。

    最終的には、それらのノウハウを技術伝承ツールLXP(Learning Experience Platform)に体系化し、設備メーカーやその顧客の知識データベースとしてプラットフォーム化し、多数の水力発電所の機器運用ノウハウの情報データ基盤として高度予防保全運用をサポートする。

日立グループ、四十四田発電所における保守・点検業務のスマート化実証の第1フェーズが完了
水力発電所における保守・点検業務のスマート化の概念図
第1フェーズにおいては、保守・点検業務を稼働状況に基づく適正なタイミングで実施することにより、現場の作業者が遠隔地の発電施設に赴く頻度の適正化が可能になった。これによって、作業者の負担軽減につながり保守・点検業務が効率化され、また設備状態や故障状況に応じた適切な点検時期の検討や、センサーデータや予兆診断情報などの分析によるこれまで特定困難だった故障原因の特定といった高度化が実現可能なことが確認できた。

この実証結果を踏まえて2022年度は第2フェーズとして、保守・点検業務の実際の運用における安全性・信頼性の担保や、日立グループのノウハウの横展開を予定している。これにより、デジタル技術を活用した保守・点検業務に従事する人が効率的かつより高度に設備状態を分析して故障を回避することで、さらなる安定稼働に向けた高付加価値化の検証を追究するとのこと。

そして2023年度以降、四十四田発電所のスマート化実証で得られた成果を、国内外の水力発電所へ展開していくとした。岩手県企業局においては、他の水力発電所への横展開として2024年度をめどに入畑発電所や胆沢第二発電所への適用をめざしている。

※1 全天球カメラ:360度の全方位を1台で撮影できるカメラ。
※2 PTZカメラ:遠隔で水平方向・垂直方向・拡大・縮小の操作ができるカメラ