ファッション×テクノロジーの最先端を行く。 三越伊勢丹のIoT活用インタビュー

積極的にファッションとデジタルの融合の取り組みを進める、百貨店の株式会社三越伊勢丹ホールディングス。

リアル店舗でここまでIoTの取り組みを大々的に実施している企業は珍しく、ベンチマークをしている企業も多いのではないだろうか。

様々な取り組みを実施し、実際にどうだったのか。今回IoTNEWSでは、メールインタビューと直接インタビューを実施し、その内容を第1回と第2回に分けてお届けする。

第1回のこの記事は、これまでの取り組みの中で、良い結果が出たサービスや課題が残ったサービスなどについて、株式会社 三越伊勢丹の各担当者にメールインタビューを実施した内容を、第2回は、三越伊勢丹グループのIoT(デジタル)戦略を担当する、秘書室 特命担当 部長 北川竜也さんに伺った、これから伊勢丹新宿店が目指す方向について、をお届けする。

-様々なデジタルサービスを実施されていますが、特にIoT分野でこれはぜひ今後も続けていきたいという、お客様からの反応が良かったサービスを教えてください。

伊勢丹新宿本店 本館2階 TOKYOクローゼット担当 アシスタントセールスマネージャー 松原徹氏:
8月26日から約2週間展開した「デジタルとファッションが融合するあたらしいライフスタイル」のご提案の中で、反応が良かったものは、世界初のデジタル技術を使用したミラー「memomi」です。

これは、試着した姿を360度から確認できる、メモリー機能付きのデジタル技術を使用したミラーで、まるで鏡に映しだされているかのように見えます。歪みの補正、試着した姿の画像比較や、様々な角度からの画像確認、衣服の色の変化等が可能で、保存した画像はSNSでシェアすることもできます。

memomiを利用されるお客さまの年代としては、20代前半以下、40代後半以上の女性が多かったように思います。利用されて、色の変化や、画像の比較、360℃での画像確認、スマホとの連動などに対し、やはり驚きや、楽しさを感じていただけ、更には、”試着しないでプロジェクションマッピングみたいにできたらいい”等のより有益なお声をいただくことができました。

三越伊勢丹は、今後もデジタルとファッションの融合はますます身近になり、3Dスキャニングやそこから得られるデータをベースとした、モノづくり、またお客様への商品のご提供プロセスの大きな変化が近しい未来になると予測しています。

※参照
2012年にニューヨークで始まったファッションとテクノロジーを繋ぐ、世界的なイベント「DECODED FASHION」が、2015年7月9日、「VOGUE JAPAN」「GQ JAPAN」等を手がけるコンデナスト・ジャパンにより、アジアで初めて日本で開催された。三越伊勢丹は、ファッション×テクノロジーの分野で優れたサービス、商品を持つ企業を世界から募集し、優勝者を決めるコンペティション「THE ISETAN CHALLENGE」をこのイベントの中で実施し、優勝したデジタル技術を使用したミラーの「memomi」と、準優勝の縫い目のない服を作る3Dプリンターの「ELECTROLOOM」に関して、伊勢丹新宿本店の彩り祭にて展示を行った。

 

-Beacon(無線LANによる信号送出)を設置し、位置情報の送受信を行なって情報発信を行う「ISETANナビ」の来店客の反応や結果はどうでしょうか。

伊勢丹新宿本店 営業計画 情報サービス マネージャー 佐々木史子氏
「lSETANナビ」は、ナビゲーション機能によるお客さまのお買物ストレスの軽減・利便性の向上と、情報提供による潜在的な購買ニーズ喚起・回遊促進を目的としたスマートフォンアプリです。

lSETANナビ
lSETANナビ

導入の目的としては、「世界最高のファッションミュージアム」の実現を支えるためのIT活用で、今後、顧客行動分析、アプリ決済、EC連携などを見越しての第一弾となります。ナビゲーション機能によるお客さまのお買物ストレスの軽減・利便性の向上と、情報提供による潜在的な購買ニーズ喚起・回遊促進を目的とし、2015年4月29日からスタートしました。

お客様からは、「店内をめぐる楽しみが増えた」「その週の主要なイベント・プロモーション情報がわかって便利」とのお声がありました。館内回遊時のほか、待ち時間などに「ISETANナビ」アプリの一覧画面をご覧いただいているケースも多いようです。また、全館企画に沿ったスタンプラリーなど、ナビゲーション機能と連動した情報発信も好評です。

ご来店頻度の高いお客さまがダウンロードされるケースが多いようなので、お客さまのお声をもとに機能を高め、来店したからこそ得られる情報の充実など、より楽しんでいただける「ISETANナビ」を目指します。

ファッション×テクノロジーの最先端を行く。 三越伊勢丹のIoT活用インタビュー
天井に設置してある、Beacon

 

-販売員の接客を、ウェアラブル端末やBeaconなどによる分析をしているとのことですが、どのようなことを実施したのでしょうか。

株式会社 三越伊勢丹ホールディングス 広報 企業広報担当:
内容としては、店内にお買い場に入ってくるお客様や、出ていくお客様などをカウントするセンサーを設置し、スタイリスト(販売員)は時計型のウェアラブル端末を身に着け、お買い場に設置されたビーコン端末が、スタイリストの持つスマートフォンと無線で通信し、スタイリストの位置を特定して記録しました。

スタイリストは、接客開始と終了の時刻をウェアラブル端末に入力し、センサーはその間の来店客数や、スタイリストの動き、接客時間などのデータを取得します。それをもとに店頭のスタイリストの行動分析、接客にかける時間、購入に結び付くヒット率等を分析し、より効果的な要員配置や、売り場構成等につなげることもできました。

こちらは2012年から取り組みをはじめ、新宿本店では2013年に一部のお買い場にて実施しました。行動分析に取り組みをはじめ、現在では一定の成果が出たため、運用はいったん終了しております。

-ファッション×テクノロジーという組み合わせの取り組みが、業界で盛んになっているように思いますが、何か課題はお持ちでしょうか。

伊勢丹新宿本店 婦人営業部 計画担当 マネージャー 宮田雅文氏:
個別的施策の話になりますが、今回、SUPURミュージアムの際に、導入した人工知能SENSYによる接客についても、お客様にアプリ、Webサービスを通じて、「好みの情報」をご入力頂く作業や、お客様毎に人工知能が提案するスタイリングをベースとした、一歩先のアナログのご提案など、これまでにないワークフローが発生するため、そのフローに慣れていくという課題があります。

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人工知能SENSYによる接客

現時点では、まだ実験段階を出ていない為、今回の導入の結果を顧客視点でしっかりと振り返り、課題を抽出して、今後の展開を考え、よりお客さまにとって、より快適な生活を楽しんでいただけるような、ご提案の幅を広げていけるようなサービス展開を目指してまいります。

※参考:伊勢丹新宿本店で、「人工知能接客」スタート

-クラウドファンディングMakuakeとの取り組みを教えてください。

ファッション×テクノロジーの最先端を行く。 三越伊勢丹のIoT活用インタビュー
店頭で展開されているクラウドファンディング。展示されているのは、株式会社なまえめがねの、「雰囲気メガネ」

伊勢丹新宿本店 婦人営業部 計画担当 マネージャー 宮田雅文氏:
百貨店の店頭でクラウドファンディングを展開するのは、おそらく日本初ではないかと思います。私たちの目的としては、世の中にない新しいものや、若手のクリエイターやデザイナーを発掘していきたい、という想いがあります。

今はMakuakeさんで掲載されている商品を伊勢丹で展示を行い、お客さまに「面白い」と感じていただけたら、ぜひMakuakeで支援をしてあげてください、といった取り組み内容になります。

どんどん新しいものが出てくる中で、百貨店に並ぶにはそれなりの資金も体力も仕組みも必要になると思うのですが、小規模だけれど、素晴らしいアイデアをもってプロダクトの開発に情熱を持っている企業の、面白いアイデアがたくさんあるので、そういったものをお客様に伝えていきたいと考えてこのプロジェクトをはじめました。

-Makuakeでは実際に商品を見ることができないので、その場を提供しているというわけですね。

伊勢丹新宿本店 婦人営業部 計画担当 マネージャー 宮田雅文氏:
そうですね。皆さんにメリットがあります。

まず出品者のメリットとしては、ネット上にあげるだけではなくて、手前みそながら伊勢丹新宿店という非常に影響力が高いショップに飾られるということで、支援の幅が広がると思っています。もうひとつは出資者。出資をするかどうか悩むこととして「実際のモノを見てみたい」というのがあります。それをここの場所で展示をすることで叶えていく。

私たちにとっても、新しい商品や新しいクリエイターが出てくることが大きな価値ですし、新しいお客様が来店することも価値です。Makuakeさんにとっても、「伊勢丹に飾ることができるのであれば、出したい」という出品者が現れるかもしれない。伊勢丹で商品を見て、支援したいという方が現れるかもしれない。

出品者、支援者、伊勢丹、Makuakeさん、それぞれにとってすごくメリットのある取り組みになります。

-Makuakeには多くの商品がありますが、伊勢丹に設置される選定ポイントは。

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光枡プロジェクトの「光枡」

伊勢丹新宿本店 婦人営業部 計画担当 マネージャー 宮田雅文氏:

まずは、出品者が伊勢丹に飾りたいという意思があるかどうかがあります。ここは、アートギャラリーという考え方の場所で、伊勢丹新宿店が2013年にリモデルをしたタイミングで、何年かぶりに吹き抜けができまして、その周りをお客様に回遊していただく場所にしましょう、という想いがあります。

私たちはアート&フューチャークリエーションというテーマを設けて、文化的、アート的なもの、もしくは未来的なもの、をクリエイションしていく場としているので、それに沿った商品を展示しています。そしてここは短期のプロモーションではなく、何か新しいものを発信していく場所として、中長期的に実施していきたいと思っています。

お客様には「これ、買えないの?」という方もいらっしゃるのですが、企画の意図をご説明すると、「面白いことをやっているんだね」とおっしゃっていただける方の方が多く、そのように接客をして支援に繋がるパターンも多いのです。

-今後デジタルとファッションを融合したサービスや、IoTサービスへの取り組み予定について教えてください。

株式会社 三越伊勢丹ホールディングス 秘書室 特命担当 部長 北川竜也氏:

お客様から頂戴するデータ、また三越伊勢丹が持っている商品、サービスを中心とするデータをいかに安心、安全に活用しながら、お客様のお買いものの便利さ、楽しさを広げられるか、に向き合って参ります。

3Dスキャニングを使ったオーダーメイドや、お客様毎のお好みに合わせたご提案等、テクノロジーの進化、導入により、サービスはよりパーソナライズの方向に向かっていくと考えております。

また、ファッションミュージアムとしての矜持として、いつまでも持ち続けていたいと感じて頂けるファッション性の高い、デジタル×ファッションの商品(洋服、デバイス等)も継続してご提案していきたいと思っております。

-ありがとうございました。

 

これから来る、避けては通れないIoTの流れに対して、反発や傍観するわけではなく、伊勢丹に合ったものであれば自ら積極的に取り入れ、いち早く顧客へ提供する。そのスピードは本当に早い。

まだ一般の生活者にはIoTというキーワードがそれほど認知されていない今、IoTに関連した技術やサービスを取り入れたくても、まずは社内の理解を進めることなど難しい事は多々あるだろう。なぜ伊勢丹は、このスピード感で取り組めているのか。

次回、株式会社 三越伊勢丹ホールディングス 秘書室 特命担当 部長 北川竜也氏に、詳細を伺ったインタビューをお届けする。

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