モビリティからスマートシティを実現する、フォードの取り組み ーCES2018レポート1

CES2018がラスベガスで開幕した。その基調講演で、フォードモーターのCEO、Jim Hackettが登壇し、モビリティの未来について述べた。

ディスラプティブ(disruptive technology)という言葉が昨年グローバルでは多く使われていたが、これはモビリティも例外ではない。

そもそも、ディスラプティブというのは「革新的な」とか「破壊的な」と訳される言葉だが、「イノベーション」という言葉が語りつくされる中、新たな言葉として登場しているようにも見える。実際は「産業そのものを根底から覆すような」と理解するほうが良い。

モビリティにおけるディスラプティブとはなんだろうか。

ジム・ハケットによると、「単なる移動のことではなく、街全体を考えた時に、デジタルが我々の生活にどう入ってくるか」だという。モビリティの世界は、クルマの中から見ている話が多いが、街を構成するモノの一つとしてクルマを捉えると、移動のあり方自体が再定義される。

もともとスマートシティの概念では、我々の都市生活全体にデジタル技術が入り込み、それが相互に作用しあうことでこれまで実現できなかったことが実現できる世界が描かれていた。

今回のフォードのプレゼンテーションでは、まさにこの世界観の中に移動という概念を取り込んだという、ある意味、クルマ産業としては見方を変えるような発表だったと言える。

そして、この「視点の転換」は、コネクテッド・カーの世界の今後にとっては、とても意味がある。

フォードのモビリティ・プラットフォーム TMC(Transit Mobility Cloud)

CES2018 Ford Jim Hackett

フォードは、今後クルマだけでなくヒトや街とつながるためのクラウドプラットフォームとしてTMCを発表した。このプラットフォームは、多くのモノやヒトをつなぐだけでなく、ヒトの生活の中に深く介在していくものとなるという。

例として、あるカップルがレストランで待ち合わせをしているシーンが紹介された。男性は、シェアカーのLiftに乗っていたが、交通状況が良くないことをTMCから知ることができるので、シェアバイクに乗り変えて目的地に時間通り到着するという例だ。

CES2018 Ford Jim Hackett

すべてのクルマがコネクテッドとなることで、交通量の把握も可能となり、交通渋滞は無くなるという。そして、都市計画のプランニングなどにも活用できるデータが取得できることになるだろう。

また、エクゼクティブ・バイスプレジデントのジム・ファリー氏は、「こういうプラットフォームをオープンに構築することで、多くの企業と提携してサービスを拡充することができるようにしたい」とも述べた。

クルマとセンサーをつなぐテクノロジー C-V2X(Cellular Vehicle to Everything)

C-V2X技術とは、クルマとクルマ(Vehicle to Vehicle)、クルマとインフラ(Vehicle to Infrastructure)、クルマと歩行者(Vehicle to pedestrians)、クルマとネットワーク(Vehicle to Network)道路上の車両とセンサーをネットワーク通信なしに接続することが可能となる技術のことだ。

すでにクアルコムのチップセットを使い、フォード、AT&Tなどが、共同でC-V2Xの実証実験を行っている。

参考:Cellular V2X

街のあらゆるものがつながることで、例えば、インシュリンを打たなければならない状況に陥ったドライバがいた時、クルマがそれを感知して、自動的に救急隊に連絡する。そして、クルマは停止し、救急隊を待つ。このような危機回避が街の中で行われるということだ。

こうやって、コミュニティ全体をコネクテッドにすることで生まれる価値は大きい。

スマートシティとプライバシーに課題

CES2018 Ford Jim Hackett

スマートシティ構想が実現されるのはとても素晴らしいことだが、実際に始めるにはプライバシーの問題など多くの問題が立ちふさがる。

ジム・ハケット氏は、ハーバード大学のミッシェル・サンデル氏とのディスカションの中で、「実際、個人の位置情報をいつも公開しても構わないというヒトは少ないのではないだろうか。」と述べた。

ここでは触れられなかったが、TMCと同様のクラウドプラットフォームが複数存在する場面でどうするのかということも解決しなければ実現は難しいだろう。

今回述べられたスマートシティの構想自体は、近未来を予感させられたが、実現に向けた様々な課題を一つ一つ解決していくことが重要だと感じた。

CES2018特集
1. モビリティからスマートシティを実現する、フォードの取り組み
2. 2018年に注目すべき3つの技術カテゴリー
3. HUAWEIの新スマートフォンMate10Proとスマートホームソリューション
4. スマートホームはハブ化の流れへ
5. VIAROOM HOME フランス発インテリジェントハブ
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7. 5Gは未来を可能にするのか、クアルコム・百度・ベライゾン、トップの想い
8. 日本のユニークなセンシング技術を集結
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10. クアルコムのモバイルAIへの対応と最新プロセッサーの力
11. 「移動の再定義」が具体的に始まる日は近い
12. Intelの5Gを意識した取り組みと有人飛行のドローン
13. VR用素材を美しく作る、コダックの4K対応360°カメラ
14. 不在時の宅配物を守るIoTロックシステム
15. SONYは、スマートホームとaibo、車載イメージセンサー技術などで技術力をアピール
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