スマートホームはハブ化の流れへ ーCES2018レポート4

ラスベガスで開催されているCESレポートの第四弾は、スマートホームの潮流についてだ。

毎年CESを訪問していると、年ごとの流れがある。スマートホームについて言えば、2年前の2016年は、どのネットワーク・アライアンスに入っているか、ということが大きな焦点だった。

AllScene, Z-WAVE, Zigbee, Threadなど、ネットワークのレイヤーもバラバラに語られていて、素人目には「そういうチームがあるのだろう」というくらいにしか見えなかったかもしれない。

昨年2017年は、Amazon AlexaとGoogle Assistant対応が多くのブースで展示されていた。多くのブースで、これらのロゴが踊っている状態で、その後の世界の展示会においてもこの傾向が年間を通して続いていたことは記憶に新しい。

2018年になって、この動きがどうなるかということが注目されたが、結論から言うと、「ハブ化」が進んでいると言える。

2年前にあったような相互接続性の問題は当然のように回避する動きに走っていて、相互にAPIを公開しているため、それを読み解くことで「スマートホームのハブ」を作ることができるのだ。

この流れ自体は、拙書「2時間でわかる図解IoTビジネス入門」でも数年前に書いた通りなのだが、ハブ化、ワンコントーラー化は今後一層進んで行くものと思われる。

スマートホームのハブ化とは

CES2018 スマートホーム

多くのデバイスがリリースされると、各々をコントロールすることがむずかしくなる。そこで、「一つのスマートフォンアプリで全部をコントロールしよう」という動きになるわけだ。

当初、2016年に起きていた通信の問題も解決する必要があったため、Appleなどは、「Home Kit」という仕様を作ったりしたが、その後のAPIでの相互接続性を担保する流れのナカでは、この動きはデバイスメーカーにとってみれば、「わざわざAppleに合わせなければならない」という意味で無駄だったのではないだろうか。

この戦略は、市場占有率がある一定値を超えたときに意味が出てくる。

当時のAppleはスマートフォンの分野では市場占有率が高かったが、まだ未成熟市場であるスマートホームの市場ではスマートフォンありきの戦略はうまくいかなかったのだと言える。

逆に、昨年のAmazonは、alexaエンジンとデバイス企業との協調を進めつつ、「スマートホーム用のハブとなる」Amazon Echoをリリースし、市場をそれなりに獲得できたことから、多くのデバイスメーカーがAPI連携の方向に舵を切ったのだと思われる。

その結果、「APIを知っていれば誰でもハブになれる」という市場環境が登場し、今回の「ハブ化」という流れが生まれたのだろう。

音声応答エンジンの活用の中で、Amazon EchoやGooogle homeなどは、このハブ化の流れだと言える。

ワンコントローラー化

CES2018 スマートホーム

スマートホームの世界では同じメーカー製品は一つのアプリでコントロールできる、という流れがもともとあった。例えば、nest社ではインターネットカメラも、サーモスタットも、同じアプリでコントロールできる。

しかし、この考え方では、他の数多あるデバイスとの接続性が担保されることがない。

そこで、第三者となる企業がこの溝を埋めるために動くのだ。これは、前述したハブ化の流れと同じことを指す。

そして、ハブ化を行ったら、当然これを一つのアプリで動かそうということになるのだ。

ハブ化の先にあるもの

ハブ化の先にあるものとして、「インテリジェント化」がある。

すべてのデバイスをハブに集約することができれば、次に出てくる問題は、「それぞれをコントロールするのは面倒臭い」ということだ。

それぞれをコントロールする面倒を省こうとすると、住人の生活パターンを知り(学習し)、気を利かせてコントロールするしかない。

その、一つが「テーマ化」だ。

スマートホームの行動テーマとは

行動をテーマ化すると何が起きるか。

例えば、帰宅すると、

  • 電気がつく
  • 暖房がつく
  • カーテンがあく
  • お湯をわかす

ということが一気に起きるということだ。

つまり、住人が帰宅したらはじめにやることはなにか、ということをテーマとして保持していこうという流れになる。

帰宅時、外出時、在宅時、午前中、午後、夜間、と様々なシーンに合わせたテーマを作っていくことになる。

今回、この「テーマ化」を進めたソリューションをHuaweiなどが発表した。

しかし、これを全部設定するのも面倒ではないだろうか。

ハブのインテリジェント化

そこで、登場するのがハブのインテリジェント化だ。

APIによって連携した各デバイスは、そのデバイスから住人の行動要素と成り得る情報をハブに送るのだ。例えば、電気の点灯・消灯などの情報から在宅の状態を得るといった具合だ。

これを機械学習していくことで、ハブは住人の行動パターンを得ることになる。そして、住人は特に何もすることなく、ハブにデバイスを接続する設定をしておくだけで生活パターンを考慮した動きをデバイスが自動的に行うのだ。

今回のCESでのインテリジェント化の展示については、レポート5で紹介する。

インテリジェント化の問題点

近未来のイメージができる、「ハブのインテリジェント化」だが、問題点もある。

例えば、熱源となるような湯沸かし器などを巻き込んだ場合、最悪の場合空焚きから火災へと発展する可能性もある。

どのデバイスであれば、インテリジェント化が可能か、最悪問題が起きた場合のプランはできているか、など、実際にスマートホームがインテリジェントになる上での課題はまだまだあると言える。

それにしても、もう少し市場が広がってこないと、こういった対応をするコストをメーカーが持つこと自体厳しいと言わざるを得ない。

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