5Gは、XRの利用や製造分野でのセンサー情報の収集と遠隔操作でのファクトリーオートメーション、交通分野での自動運転や運行管理など、幅広い用途やニーズに合わせ柔軟で高度な通信を提供する技術として期待されている。また、利用用途の拡大により接続端末数や通信量は急速に増加すると予想され、今まで以上に迅速かつ低コストでのネットワークインフラの構築が重要となっている。
KDDI株式会社、Samsung Electronics Co., Ltd.(以下、サムスン電子)、富士通株式会社は、商用ネットワークに接続するオープン化した5G スタンドアローン(以下、5G SA)(※1)の仮想化基地局によるデータ通信に成功した。
同基地局は、O-RAN標準に準拠(※2)し、サムスン電子の無線制御装置(DU: Distributed Unit、CU: Centralized Unit)と富士通の無線装置(MMU: Massive MIMO Unit)で構成されている。
従来の基地局は無線制御装置に専用ハードウエアを用いているのに対し、同基地局では汎用的なハードウエアを用いている。ネットワーク機能はサムスン電子の完全に仮想化されたソフトウエアで実現している。また、無線制御装置と無線装置間のインターフェースをオープン化したことにより、サムスン電子の無線制御装置と、富士通の無線装置という異なるベンダーによる構成を実現した。
完全仮想化されたソフトウエアは、さまざまな場所に設置したハードウエアに迅速に展開する。5G SAで提供されるネットワークスライシング機能や、マルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)を組み合わせることで、企業の利用用途に合わせた通信サービスを柔軟かつ迅速に提供する。
全国で共通化した汎用のハードウエアを利用することが可能となるため、基地局建設に関わる作業が効率化できる。また、完全仮想化されたソフトウエアは自動化システムとの親和性が高いため、基地局の設定作業時間が短縮され、地方などを含めた全国への迅速な基地局展開に貢献する。
今後KDDIは、2022年度中に同基地局を一部地域から展開予定だ。
※1 5G スタンドアローン:5G基地局に5G専用に開発したコアネットワーク設備を組み合わせるシステム。
※2 O-RAN標準に準拠: O-RAN Allianceで策定された異なるベンダーの機器と接続が可能な仕様。
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