近年、大規模な自然災害が増加しており、人命救助においては早期の救出が重要となっている。
KDDI株式会社と株式会社KDDI総合研究所は2021年1月に、ヘリコプター基地局の実証で、通信の確保と共に携帯電話から発信される電波の補捉による在圏状況の確認や位置の推定に成功している。ヘリコプター基地局は携帯電話の通信エリアを臨時に構築することを目的としていたため、広範囲に電波を放射していた。そのためエリア内で被災者の携帯電話を検知しても、その位置を推定するのに時間がかかることが課題となっていた。
このほどKDDI、KDDIエンジニアリング株式会社、KDDIスマートドローン株式会社、KDDI総合研究所は、災害時にヘリコプターやドローンなどからアプリ不要で全通信事業者の携帯電話の電波を捕捉可能なシステムの試作機を開発した。
そして、2023年1月26日に鹿児島県薩摩川内市上甑島で同システムの実証を行い、地中などに埋まった環境下でもスマートフォンを検知し位置推定ができることを確認した。試作機で得られた知見をもとに、
同システムは、ヘリコプターへの搭載を前提とした開発により、ドローンへの搭載やハンドキャリーにも対応した。災害状況などに合わせ、より迅速な活用が可能だ。
また、広範囲に電波を発射させることができる広角(ビーム幅:90度)、中角(ビーム幅:40度)、狭角(ビーム幅:15度) の3種類のアンテナを使い分けることで、半径数キロメートルから数百メートルの範囲の位置推定が可能だ。ドローン搭載時の風などの影響にも配慮し、アンテナサイズは最も大型となる狭角タイプでも50センチメートル×50センチメートル×3センチメートルを実現した。
さらに、携帯電話事業者を問わず電波捕捉が可能だ。事前のアプリインストールも不要なため、緊急時の幅広い活用が見込まれる。なお、同システムを搭載するドローンは、災害現場での運用を見据えて防塵・防水や耐風性などの飛行性能や運用性を考慮して設計されている。
同システムにより、災害時や山岳救助時など携帯電話が使用困難な状況下においても、通信事業者を問わず救助対象者の携帯電話の位置推定をすることが可能となる。同実証における各社の役割は以下の通り。
- KDDI:同システムの企画・実用化検討、同実証の推進
- KDDIエンジニアリング:同システムの試作開発、同実証の推進、実用化検討、システム検証
- KDDIスマートドローン:ドローン試作機の開発・検証、同実証におけるドローン運航管理
- KDDI総合研究所:アンテナ設計・開発
なお、同システムは、総務省令和3年度周波数逼迫対策技術試験事務のうち「救助活動を支援する携帯電話の電波捕捉に関する技術実証」として開発されたものである。
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