KDDI株式会社は、衛星との干渉回避の対策を通じて、5Gの大容量・高品質な通信に寄与するSub6(3.7/4.0GHz帯)エリアの広さを2倍に拡大し、高速・安定した通信を2024年度に提供する予定だ。
同社は、2023年度末に約3.4万局のSub6基地局の開設を目指すなど、5Gエリア展開と通信品質向上に取り組んでいる。2024年度以降も続けて、顧客の体感品質を重視し、端末から自動収集する通信品質データやSNSの顧客の声などのビッグデータの分析・対処の自動化により、品質向上の効率化やスピードアップを図る計画だ。
KDDIは、2020年3月から5Gサービスを開始。5G導入期では、4G周波数を5Gに転用することで、面的な整備を先行した。特に、生活動線となる鉄道路線の5Gエリア化を目指し、鉄道・商業地域を重点的に整備した。
2024年度以降は5Gの普及期とし、高速・安定した通信速度を提供するため、5G新周波数のエリアをさらに拡大するとしている。
5G導入期における品質向上の取り組みとしては、パケ止まりへの対処と、様々なデータと自動化活用による改善プロセスがある。
パケ止まりへの対処では、3Gから4Gの移行時に蓄積した各種チューニング技術を活用し、改善へ向けた取り組みを実施している。
具体的には、5Gの初期展開においては、5Gバンドのエリア端にて、弱い5Gの電波を保持し続けることで、体感品質が劣化する課題があった。そのような場所では、品質の良い周波数帯へスムーズに遷移できるよう、端末のバンド間遷移の最適化を行った。
また、5Gの利用率を上げるため、端末を5G NSAにおいて5Gとの無線接続と同時に使われる4Gバンドである「アンカーバンド」へ積極的に誘導することで、周波数逼迫が発生する課題があったが、バンド間のトラフィック負荷分散最適化を実施した。
さらに、4G周波数を転用させて、早期に5Gエリアを展開してきたため、同周波数で4Gエリアと5Gエリアが隣接する箇所では、システム間干渉により体感品質の劣化を招くといった課題があった。そこで、エリアチューニングを行うことで、5Gエリア最大化と4Gへの干渉最小化を両立させた。
様々なデータと自動化活用による改善プロセスでは、まず、端末アプリのログ、基地局通信のログ、コアネットワークの品質情報、SNSでの声を自動収集し、通信品質を可視化。品質劣化の検知に活用している。
そして、収集したデータに対して、品質劣化要因の分類を自動化することで、要因分析時間を約80%短縮した。
対策としては、イベント会場やその周辺の動線など、人が集中し、一時的に品質劣化が見込まれるエリアに対し、周辺の基地局の自動監視や、混雑してきた場合に空いている周波数帯などへのトラフィック分散を自動で制御している。これにより、リアルタイムに検知・対策を実施している。
今後は、本格的な5G普及期に向け、高速・安定した通信速度を提供するため、5G新周波数の本格利用フェーズに入る。広帯域なSub6帯(3.7/4.0GHz帯)を合計帯域幅200MHz保有しており、KDDIは約3.4万局の開設を予定している。
2024年4月以降は、衛星通信との干渉が緩和することにより、Sub6帯のエリアがさらに広がり、高速・大容量・低遅延の5G通信をより体感できるようになるのだという。
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