スタジアムや主要駅など、多くの人々が集まる場所では、「バーストトラフィック」と呼ばれる突発的なトラフィック需要が発生しやすい。
このような状況では、従来の無線装置に組み込まれている各種機能を用いた内部制御だけでなく、大きく広いエリアを対象としたトラフィック制御が求められる。また、従来の方式では、トラフィックの変動を検知するまでに時間がかかるという問題があった。
こうした中、ソフトバンク株式会社とエリクソン・ジャパン株式会社は、ノンスタンドアローン方式の5Gネットワークの商用環境で、基地局外部の制御装置でネットワークのパフォーマンスデータを1分間隔で取得し、その情報を基にトラフィックを制御する「高速自動最適化機能」の実証に成功した。
これまでに実施した概念検証では、トラフィックの変動検知から最適化までの一連の自動制御を、5分以内で実施できることを確認している。これは、従来の無線装置に組み込まれる内部制御ではなく、外部から制御を行う次世代ネットワークの実現に向けた事例の一つだ。
高速自動最適化機能を構築するために、ソフトバンクとエリクソン・ジャパンは、基地局外部の制御装置でパフォーマンスデータを1分間隔で取得し、複数の周波数・基地局を含めたパフォーマンス改善のための最適化策を自動的に判断することで、該当の基地局に対して無線パラメータの自動制御を行う。
これにより、大規模なトラフィック変動を伴う制御において効果を発揮する。
2023年9月には、スポーツの試合が行われたスタジアムの商用ネットワーク環境で概念検証を実施し、3時間程度の評価時間で29回の無線パラメータの自動制御を完全自動化の閉ループで実行した。その結果、5G NSAにおけるユーザー体感速度が下りで約53%、上りで約10%改善した。
また、2023年11月には音楽イベントが開催されたドーム球場や都内主要駅でも評価を行い、異なるトラフィックのパターンにおいても高速自動最適化機能が有効であることが確認された。
今後ソフトバンクは、高速自動最適化機能の適用エリアを拡大し、全国のスタジアムやイベント会場などで活用する予定だ。
さらに、スタンドアローン方式の5Gネットワークのユースケースにも拡張し、4Gと5Gで「パケ止まり」のない、より快適なモバイルネットワークの提供を目指す。
将来的には、外部システムとの連携や、AIと機械学習を利用したRICの導入に加え、従来のネットワークとの協調を考慮した次世代ネットワークの構築につなげていくとしている。
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