南極には、通年観測を続けている基地(越冬基地)が約40あり、気象、大気、雪氷、地質、生物、海洋、宇宙物理などのさまざまな観測・研究を行っている。
日本の昭和基地には、2004年にインテルサット衛星通信設備が設置され、観測データを常時国内に伝送し、研究の進展や、隊員の福利厚生の充実化を目指して運用されてきた。また、国内小中高校や海外の学校、一般向けの情報発信などにも活用されてきた。
しかし、インテルサット衛星通信を利用した映像伝送の映像品質は、HDTVが上限であった。
こうした中、KDDI株式会社、株式会社KDDI総合研究所、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立極地研究所(以下、極地研)は、南極昭和基地とKDDI総合研究所本社間で、Starlink衛星通信回線を用いた8K映像のリアルタイム伝送の実証実験に成功したことを発表した。
実証実験では、Starlinkを活用した高精細映像のリアルタイム伝送により、隊員の健康状態や生活の様子、昭和基地の自然や環境を日本および海外に伝えるための技術を実証した。
具体的な検証内容としては、「昭和基地における映像伝送機器利用のための検証」「受信映像品質の検証」「高精細映像をStarlink衛星通信回線で効率よく伝送するための、送信帯域制御技術およびパケットロス補正技術の検証」が挙げられている。
システム構成は、昭和基地において、KDDI総合研究所が開発した8K映像のリアルタイム伝送が可能な遠隔作業支援システム「VistaFinder Mx」を搭載した8K動画撮影対応スマートフォンを用いて撮影・圧縮し、衛星通信回線を通じて伝送した。
その映像をKDDI総合研究所に設置した受信システムで受信・伸長することで、8K映像としてモニター表示することができたほか、安定した映像品質を維持できることが確認された。
この成功は、南極大陸の自然観測や昭和基地から離れた場所での観測隊員と国内担当者間のリアルタイムコミュニケーションなど、さまざまな利用に活用できると期待されている。
今後KDDIとKDDI総合研究所は、スマートフォンを活用した8K映像のリアルタイム伝送システムの有用性検証や課題の抽出・改善を行い、通信回線の速度にかかわらず世界中どこからでも利用が可能な状態を目指すとしている。
また、極地研は、Starlinkによる広帯域低遅延の通信回線を生かし、これまで以上に高度な昭和基地観測への利用を進めると同時に、南北両極での観測のほか全球的な観測に活用し、現地隊員の負担を軽減しながら、国際的な連携観測のほか、宇宙飛翔体観測との連携の可能性を広げて行く計画だ。
なおKDDIは、今回の実証実験の結果を、2024年2月26日から2月29日にスペイン・バルセロナで開催されるモバイル関連展示会「MWC Barcelona 2024」のKDDIブースで紹介する予定だ。
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