ミリ波帯は、高速通信が可能なため、駅のホームや競技場、待ち合わせ場所など、人が集中する場所への設置されることが多い。反面、直進性が強く、ビルや樹木などの影響を受けやすい性質を持つため、ほかの周波数帯と同様にビルの屋上などにアンテナを設置する場合は、ミリ波帯の通信エリアが狭いエリアに点在して形成さていた。
そのため、連続・緻密な展開には多くの基地局投資が必要であるほか、基地局の設置場所の確保に加え、バックホールとなる光ファイバー回線の敷設およびその運用コストも課題となる。
一方で5Gの普及や、6Gに向けてトラフィックの継続的な増加が見込まれるため、ミリ波を含む高周波数帯の活用は求められている。
こうした中、KDDI株式会社と京セラ株式会社は、高周波数帯活用に有効な、ミリ波(28GHz帯)通信エリアを、効率的に拡張する無線中継技術の開発に成功したと発表した。
この技術は、受信したミリ波基地局の電波の中継網を、中継器自体が自律的に形成し、ミリ波エリアを効率的に拡張する特長を備えている。この技術を搭載した中継器は、相互に連携してメッシュ状につながり、ミリ波エリアの拡張が可能になる。
従来の無線中継技術で構成される受信機能(ドナー)と送信機能(サービス)の独立概念を一新し、送受信機能を備え、無線環境に適応して動的にその役割の切り替えを可能としている。
これにより、中継器同士が網目のようにつながり、メッシュ状にエリア構築を可能としている。
さらに、この中継器は、複数の方向から受信するミリ波電波のうち、最も無線品質の良い中継ルートを選択し、メッシュ状のエリアを形成する。ミリ波基地局または隣接の中継器から受信する信号の劣化を検知した場合、最適な中継ルートを計算し、瞬時に切り替えを行う。
万が一、建物建設や樹木などの環境変化により中継ルートが遮蔽された場合でも、常に最適な中継ルートを自律的に選択し、最適化を行う。
また、中継器装置は電源供給だけで動作し、バックホール回線も必要がないため、設置が容易であるだけでなく、オペレーションコストの削減も実現できる。あわせて、中継器の徹底した小型化と軽量化を行い、街路灯などへの設置を可能とした。
中継器の大きさは縦216mm、横216mm、高さ246mm、重さ4.9kgで、一般的なミリ波用の基地局に比べて大きさと重さを約7割削減しているのだという。
そして今回、技術のフィールドでの性能確認を目的に、東京都と新宿区が保有する街路灯および地下出入口などに、合計22台の中継器を設置した。
この試験は2024年10月から実施し、西新宿地区の約600メートル四方の範囲において、既存のミリ波のカバー率と比較し、道路のカバー率を33%から99%に拡大したことを確認した。
今後両社は、2025年3月31日までこの試験を継続し、トラフィックの増加を見込む繁華街や駅、競技場などでのさらなる高速で安定した通信サービスの提供に向け、2025年度の実用化を目指すとしている。
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